ヒーロー
それはかつて私が今ほど鈍感でなく、今より賢かったころのことだ。
私のために不幸になってよ、と彼女が言った。
死のうとして、
そして、失敗した僕に。
不幸になるしかなくても、生きて私のために不幸になりなさいよ、と。
なんて傲慢なんだと思った。
それでも、その傲慢さに救われたのだと、今は思う。
幸せか、不幸かはわからないけれど
今日も私は、彼女の隣で生きている。
真っ黒で、落ちるしかないと思っていた世界だけれど、彼女の隣はほんの少しあたたかい
そう思いながら。
もしかしたら、これが幸せなのかもしれない
なんて、思いながら。
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