嘘が真

Natsu

第1話



【3がつ31にち】



私は今日彼氏と別れた。

悲しくて、当たり前の出来事だが。

私は何故か開放感に包まれていた。


初めて付き合った彼との思い出はとても浅く短いものだった。

告白されて、よく分からないまま付き合って、学校から一緒に帰って、手を繋いで…。


恋愛初心者の良くある失敗談だ。

友情と愛情の区別がつかない。


最終的には、

彼と私の「好き」の大きさ、重さ、色、形…

すべてが噛み合わなかったと言っても過言ではない。そう思う。

私は友情で、彼は愛情。

そう考えれば、噛み合わなかったことも納得がいくかと思う。



『今月いっぱいでお別れしよう』


そう言ったのも私だった。

私は彼に申し訳ない気持ちしか残らなかった。私があの時断っていれば、彼は辛い思いせず、過ごしていたかもしれない。私があの時断っていれば、彼は私の親友でいれたかもしれない。申し訳ないことをした。勿体無いことをした。後悔の念しか生まれない。


彼は言ってくれた。

「これからも友達でいてくれますか?」

私は答えた。

「もちろん!これからもよろしくね!」

そう答えるしかない。答えるしかなかったのだ。私は彼のことを普通にいい友達だと思っていたし、友達として大好きだった。こんないい友達を手放すわけにもいかない。



私たちは円満に別れた。

私は思い残すことなく、キレイさっぱりと。

彼は何か言いたげだが、関係を断ち切られた訳では無いため、ホッとしているようだ。




私はゆっくり熟睡できるはずだった。

31にちの夜。

私にとって大きな事件が起きたのだった。

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