彼女と一緒に異世界行ったけど、相変わらず彼女が強い

@elldoll

第1話「彼女と一緒に放り出される」

彼女と一緒に異世界飛んだけど、相変わらず彼女が強い。


第1話「彼女と一緒に放り出される」


拝啓、お父さんお母さん

不肖、私、紅春は地球と違った別の場所に彼女と飛ばされてしまいました。

どうか先立つ不孝をお許しください


「ねぇはーちゃん、大丈夫?」


あー、うん。大丈夫だよ

口から出た言葉には覇気がない。

目の前には、そうだな?

地球で言う、熊みたいなのがいた。

熊よりもうちょっとグロテスクかもしれない。

あまり直視したくない、見たことない生物だ

で、大事な情報はそこじゃない。

その暫定熊は既に横たわっている。

自然死?いいえ、違います。

「それにしてもこのイキモノ、いきなりはーちゃんに襲いかかってきたからビックリしたよね?怪我とかない?あ!ゴミついてるよ!頭の上!」

手が届かないから飛び跳ねている、私より身長が低い彼女。かわいい

ええ、彼女が倒しました。

お前は何を言ってるんだ、と言われてもしょうがないのですが

残念ながら事実です。

追伸、私の彼女はどこでも強かったです。


一息ついて、状況を整理する。

彼女は私に抱きついて満足気だ、かわいい。

まず、この暫定熊に会う前に何をしていたか思い出せない。

7分の5で平日なので高校には行ったはずだ。なので、行きか帰りか、はたまた授業中か。

………うーん、やっぱり思い出せない。

これ以上考えてもダメだ、思考の沼から出てこれなくなる。


「はーちゃん?どうしたの?お腹すいた?」


いや、今は大丈夫。

ただこれからの食料事情は考えなければならない。

遭難のカテゴリに属した場合は無闇矢鱈に動いてはいけないらしいが、今回はそもそも探してくれる人がいない。

日はまだ高い、猶予としてはあと4時間程度あるはずだ。

なので街を探しに行こう。


「街を探すの?わかったよはーちゃん。じゃあどの方角に行く?」


地球じゃないこの世界でも東西南北は通じると仮定し、付近に人が通った道がないかを探そう。

彼女も納得したのか、辺りを見渡すが、特にない。完全なる森と平原で構成されている。

車どころか馬車も通らない道だったとは、状況が悪化している。

ここは人が寄り付かない土地なのか、なんてことだ。


「………はーちゃん」


いつも明るい声の彼女が真剣味を増している。こういう時は、よくないことが起こる前触れだ。

現にさっきの暫定熊の時だって、熊が出てくるまで私に抱きついていた。

しかし出てくる前に離れて、「なんか、おっきいのがこっちくる」っていったのだから。

予言は的中、ゆうに3メートルはある大きな暫定熊。両手に生えてる爪は人に刺さったらひとたまりもない。

そんな熊が咆哮あげてこっちに向かってくるではないか。

ついで彼女が「はーちゃんの前でそんな危ないもの近づけるな、畜生風情が!」って言いながら倒したからね。

振りかざしてきた相手の爪らしきものを受け流して、熊自身の胸に刺し、追撃で膝に蹴り、傾いたところに頭部に蹴りを入れる鮮やかな3連撃。

見慣れているから驚かなかったけど、自分の身長の倍もある熊倒すのは惚れ惚れする。


閑話休題


それは熊のきた方角と一緒だった。

現れたのは4人組の人間、ついで私は確信した。

ここ、地球じゃない。

1人は全身西洋の甲冑、1人が如何にも魔法を放たんとした杖を持つ女性。

残りの2人はよく漫画やゲームで見る鎧と武器を持っていた。

ここがコスプレ会場じゃなければ、彼らはパーティーだろう。

私の彼女は警戒したまま私の前に出る。

向こうのリーダーは、あの鎧と斧を持っている人かな。

暫定熊を見て、私達を見て、………協議してる?


「なぁ、そこのお嬢さん達」


あ、呼びかけられた


「なんですか?」


彼女が対応する。まだ敵かどうかわからないんだから、もうちょっと柔らかくいこう、ね?


「うん、わかったよはーちゃん。でなんですかお兄さん達」

「いや、すまない。このデリ・グリズリーを倒したのは君達かい?」


あの熊はデリグリズリーというらしい。デリとはなんだろうか、この世界特有の階級かな。

ええ、彼女が倒しましたよ


「そうだよ、私が倒したけど。襲いかかってきたから」


冒険者達が四者四様の反応を見せる。

甲冑の人はこちらを値踏みするように。

魔女の人は熊とこっちを行ったり来たり。

リーダーさんが唖然として。

もう1人の男の人が驚愕する。

この反応から、どうやら凄いやつだったらしい、デリグリズリー。

それならこの人達は討伐隊か。仕事を奪ってしまったようだ。


「あーそっか、お兄さん達の仕事だったのか」


彼女が理解したのか大きく頷く、かわいい。

事態からの復帰が早かったのは甲冑の人だった。


「………そうか。いや、こちらも手間が省けた。賞金がかかっているから、他のパーティに取られたくなくてな。して、君達はどうしてここに?服装を見るからにただの女性の二人旅、というわけでもなさそうだ」


おお、鋭い。私達から見たら不思議な格好の人たちだけど、逆も然りだ。

恐らくこの人は私達がワケありか、この世界の人ではないことに気づいているはずだ。


「うんうん、甲冑さん鋭いね。そう、私とはーちゃんは、目が覚めたらここにいたんだ。困っていたんだよ」

「ふむ、その辺りの事情は聞かない方がいいな。わかった、近くの街に連れて行こうか。ガルナさん、いいですか?」


名前を呼ばれて反応したのは斧を持ったリーダー。なるほど、ガルナと言うのか。


「……あ、あぁ。いいっすよ。つかアイゼさんに敬語を使われるのは恐れ多いんで、ちょっと……」

「ここのパーティのリーダーは貴方です。尊重するのは当然。クルセ、いいな?」


今度は魔女が反応する。どうやらこのパーティ、2人組を2組合わせて4人パーティにしているみたいだ。リーダーの方は鎧が似てるからね。

魔女の人、首を縦に振っている。いいみたいだ。

これで街にたどり着ける。人がいない、と言うこともなかったし、街があるならそれなりに情報は手に入るだろう。


「あぁ、だがその前に。1つ私と手合わせ願いたい」


はい、雲行きが怪しくなってきました。どうしてこうなるんだ?


……to be continue

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