2ページ
「あ、そうだ。そうちゃんはゴールデンウィークって普通にお仕事よね?」
「え、ゴールデンウィーク? そうだけど」
この仕事に普通の長期休暇は関係ないから。むしろ稼がないといけないくらいだし。
「やっぱりそうよね」
「ん? 何かあった?」
少しだけ残念そうに言う真理亜に返すと、彼女は目を細めて答えた。
「教会でね、催しものがあるのよ。ほら、この時期にもあったじゃない、フリーマーケットするやつ」
「あー、あったな、そんなの」
「それがね、五月の四日と五日にあるのよ。私、今それの手伝いに行っていて」
俺と真理亜は所謂幼馴染で、昔住んでいた家の隣にあった教会で俺たちは出会っていた。その教会は児童養護施設も兼ねていて、真理亜の実家でもある。
その教会では度々そう言った催し物を行っていて、地域の活性化にも役立っていたはず。俺も小さい頃よく行っていたし。
「もしそうちゃんに時間があるならって思ったんだけど、やっぱり無理そうね。夕方までやっているし」
んー、行けなくはないけど、準備とかに参加できそうにないし、中途半端に参加する方が迷惑掛かりそうだしな。
「悪いな」
「いいのよ、お仕事なら仕方ないでしょ。こういうのは出来る人がすればいいのよ。私とかね」
確か真理亜は専業主婦だったとか? あ、いやハウスワーカーだっけ?
「当日時間あったら顔出すよ」
「本当!? 来て来て。私もお店出すから」
「え、店出すの?」
「そ、お菓子のお店なんだけどね」
お菓子? どっからお菓子?
「旦那がそういう関係の仕事に就いているから、融通きかせてもらったの。ほら、覚えてない? 昔、金平糖とかガムボールとかチョコレートとか、小さなお菓子を渡された袋一杯に入れていいって屋台、あったでしょう?」
あー、あったあった。量り売りのお菓子の店よりももっと簡単な感じの、それでいて子供が喜びそうな屋台。サッカーボールの形のチョコが欲しくて、でもそれだとスペースがもったいないからって金平糖とか小さなラムネを入れるように真理亜に言われたんだっけ。
「わー、良く覚えてるわね! 隙間に入れた方が沢山お菓子が入るからって。私ってば小さい頃からしっかりしていたのよね」
まぁ、それは置いておいて。きっとその屋台なら子供たちも楽しいことに違いない。
「子供達喜んでくれるといいな」
「そうね、それが今からとても楽しみなの。シスターたちにも会えるし」
ニシシ、と笑う表情は昔から変わらない。きっと真理亜自身も楽しんで当日を迎えるんだろう。時間があったら俺も一袋、買わせてもらうことにしよう。もちろん、金平糖を沢山入れて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます