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「あ、そうだ。そうちゃんはゴールデンウィークって普通にお仕事よね?」

「え、ゴールデンウィーク? そうだけど」

 この仕事に普通の長期休暇は関係ないから。むしろ稼がないといけないくらいだし。

「やっぱりそうよね」

「ん? 何かあった?」

 少しだけ残念そうに言う真理亜に返すと、彼女は目を細めて答えた。

「教会でね、催しものがあるのよ。ほら、この時期にもあったじゃない、フリーマーケットするやつ」

「あー、あったな、そんなの」

「それがね、五月の四日と五日にあるのよ。私、今それの手伝いに行っていて」

 俺と真理亜は所謂幼馴染で、昔住んでいた家の隣にあった教会で俺たちは出会っていた。その教会は児童養護施設も兼ねていて、真理亜の実家でもある。

 その教会では度々そう言った催し物を行っていて、地域の活性化にも役立っていたはず。俺も小さい頃よく行っていたし。

「もしそうちゃんに時間があるならって思ったんだけど、やっぱり無理そうね。夕方までやっているし」

 んー、行けなくはないけど、準備とかに参加できそうにないし、中途半端に参加する方が迷惑掛かりそうだしな。

「悪いな」

「いいのよ、お仕事なら仕方ないでしょ。こういうのは出来る人がすればいいのよ。私とかね」

 確か真理亜は専業主婦だったとか? あ、いやハウスワーカーだっけ?

「当日時間あったら顔出すよ」

「本当!? 来て来て。私もお店出すから」

「え、店出すの?」

「そ、お菓子のお店なんだけどね」

 お菓子? どっからお菓子?

「旦那がそういう関係の仕事に就いているから、融通きかせてもらったの。ほら、覚えてない? 昔、金平糖とかガムボールとかチョコレートとか、小さなお菓子を渡された袋一杯に入れていいって屋台、あったでしょう?」

 あー、あったあった。量り売りのお菓子の店よりももっと簡単な感じの、それでいて子供が喜びそうな屋台。サッカーボールの形のチョコが欲しくて、でもそれだとスペースがもったいないからって金平糖とか小さなラムネを入れるように真理亜に言われたんだっけ。

「わー、良く覚えてるわね! 隙間に入れた方が沢山お菓子が入るからって。私ってば小さい頃からしっかりしていたのよね」

 まぁ、それは置いておいて。きっとその屋台なら子供たちも楽しいことに違いない。

「子供達喜んでくれるといいな」

「そうね、それが今からとても楽しみなの。シスターたちにも会えるし」

 ニシシ、と笑う表情は昔から変わらない。きっと真理亜自身も楽しんで当日を迎えるんだろう。時間があったら俺も一袋、買わせてもらうことにしよう。もちろん、金平糖を沢山入れて。

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