銀のムテ人 =第三幕・下=
わたなべ りえ
今までのおはなし
銀のムテ人は滅びゆく長命魔族。
霊山で祈りを捧げてムテを守り続ける最高神官の貴重な血を残すため、巫女として選ばれたエリザは、仕事をこなすのも子供を作るのも難しい未熟な少女だった。
それもそのはず、彼女は最高神官サリサ・メルの「好きだから」というわがままで選ばれてしまったのだから。
二人は、密かに愛を育んでゆくが、所詮は制度で結ばれている・いつかは永遠の別れが待っている……という現実があった。
が、徐々に少年・少女から大人へと変わっていく間に、身も心も結ばれてゆく喜びを知り、やがて二人の初恋は苦悩と葛藤を伴うことに。
子供を成せなかったエリザは、霊山をおり、祈り所の暗闇に閉じ込められてしまう。それも、サリサの「手放したくない」というわがままからだった。
エリザは、サリサへの愛を信じて、辛い生活に耐えるが、祈りの儀式で他の巫女姫と一緒のサリサ、そして、サリサの子供を抱く癒しの巫女の姿にショックを受けてしまう。
そして、自らの心を保つために、「愛し合っていた」ということを忘れるよう、無意識に暗示をかけてしまった。
巫女姫として霊山に再び上がったエリザだが、サリサの名前すら忘れる有様。
だが、心を許していた仕え人フィニエルの死をきっかけに、サリサとの思い出を取り戻し始める。
そして、エリザは妊娠。巫女姫としての使命を果たすことに。
と同時に、それは二人の永遠の別れを意味するものだが、サリサはエリザの幸せを祈ろうと、せめて二人の時間を大事にしようと思うのだった。
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