第一章 王妃(バイト)就任 その1
たくさんの視線に見上げられても、
雪とも花ともつかぬ
だってここは
私が視線を向けた先、私の下にいる人物と目が合う。彼はおもむろに両手を広げた。ぽかんとしたまま、それでも確かに
「
※
私は現在、人生の
学校から帰ったばかりの制服姿で私が座っているのは、魔法が使える
帰宅して何か飲もうと台所に向かうや
ちなみに、私がベッドに
白銀色の
「…………なあ、月子」
「何ですか」
「俺達、親友だよな」
「そうですね」
「家族だよな」
「……そっすね」
「……何か雑じゃないか?」
「そっすか?」
諸事情あって最後のほうだけちょっと
「よし月子、
「………………喜んで?」
どうしたの? 血迷ったの? 結婚する?
ぶっ飛んだことを言ってのけて私も血迷わせた、それはそれは美しい青年の名前は、ルスラン・ヴォ……なんちゃらかんちゃら二十二歳。
異世界の王様であり、
もっというなら私の
※
満月の夜に生まれたから月子、なーんて大変安直に名づけられた私の名前は春野月子。父はいい名づけが出来たとご
学力運動神経顔面
問題なのは、幼馴染が異世界の人であることである。
事の始まりは私の
異世界からこっちの世界に来た曾お婆ちゃんは、曾お
私が曾お婆ちゃんが異世界の人だと知ったのは、彼女が
私が知ったのがそのタイミングだっただけで、祖父母も両親も普通に知ってた。悲しい──……。
そんな曾お婆ちゃんが私にくれた鏡台は、曾お婆ちゃんが故郷に置いてきたもう一個の鏡台と
曾お婆ちゃんのお
これが、私とルスランの出会いである。ろくな出会いではなかった自信と自覚しかない。悲鳴と混乱と粗供養品が飛び
私とルスランが出会って、もう十年以上
ルスランの両親が亡くなった。ルスランが王様になった。私とルスランの身長が伸びた。お母さんがおせちを全品作れるようになった。お父さんがメタボ予備軍になった。ルスランが成人した。私が高校生になった。私が、ルスランを好きになった。
だけど変わらないものもある。私とルスランは大きくなっても変わらず大事な友達で、家族だ。私がつつがなく初恋と片想いの過程をルスランで
そんな変わったものと変わらないものがある時の中で、私達の間には変わらず鏡という境界線がある。ルスランもいろいろ調べてくれたけど、結局世界を
だから私達は、ずっと鏡という境界を
今日、この日までは。
十年以上、小さな鏡を挟んでしか話せなかった人が、私と同じ地面の上にいる。しかも目の前に。思っていたより背が高くて、思っていたより
ちなみに、長い付き合いだけど初めて同じ地面で対面を果たした感動の相手はというと、
私はずっとルスランと同じ地面に立ってみたかったから
「……何でお前そんな簡単に
「……何でOKしたらそんなぐったりしちゃうの」
ルスランはぐったりした顔のまま、高そうな
「えーと……それで、どうして私こっちの世界来ちゃったの?」
「……お前、三日前にリュスティナ様がチラシの裏に書いた
「ああ、あのブロッコリーごり押しチラシの。いつもみたいに引き出し取り出して
明らかに日本語じゃなかったし、英語でもなさそうだったしで、真っ先に思いついたのはルスランの国の言葉だった。だからルスランに渡したのだけど。
「……リュスティナ様の
「うん」
曾お婆ちゃんの字は、大変独特で特異で、要はど下手だったのだ。雪女にも例えられるほど絶世の美女だった曾お婆ちゃんは、確かに
いつか解読できたらいいなくらいのノリでそのメモのことは保留になったのに、それがどうしたのだろう。今一ルスランが言いたいことが
「あれな……リュスティナ様がそっちの世界に渡った
「え!? あれだけ探しても方法分かんなかったのに!?」
「で、だ」
急に真顔になったルスランに、ごくりと
「さっきの議会の最中、解読できなかった最後の一文字について考えてたわけだ」
「王様、議会に集中して」
「その時
「王様、
「頭の中であの文字列を
「王様、なんで」
「俺が聞きたいっ!」
わっと顔を
確かに昔は、お
だから本当は、こっちの世界に来られて嬉しいというのは私の一方的な喜びかもしれない。なので一人でこっそり喜んでおこう。
心の中で
「……月子さん」
「……何でしょう、ルスランさん」
ルスランって意外と大きいなと、改めて思う。長い付き合いだけど、子どもでも持ち運びできる大きさの鏡台の
しかもこの部屋本当に物がないから、大きさを
「そりゃな? いきなり
「はいはい」
「バイトの
「ほっといてください」
そんなこと言われても、私には
だけど、私のそんな
「月子、俺はお前が社会に出て
「因果応報マックスレベル!」
異世界の王様が呪いを放つと最終兵器みたいだから、どうか考え直してほしい。
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