B・S風味

 ドラキュラ伯爵の日記


 余は何世紀にもわたり人間どもの血を吸ってきたのであるが、たまさか固形物が恋しくなるときがある。真っ暗闇の柩のなかで、こっそり食べる饅頭は格別なもの成り。だが、気をつけなければなるまい。鋭利に尖った二本の糸切り歯では饅頭をろくに噛むこともままならず、しまいには喉をつまらせ死に至ることを、余は知っておる。

 老婆心ながらひとつだけ忠告しておく。下々の諸君よ、もし余からドラキュラ城への招待状が届いたら、余を納得させるだけの鄭重な言葉遣いで断ることをお勧めする。命が惜しくなければ話は別だがね。


 



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る