S・H風味

 職場からへとへとに疲れて帰宅したエヌ氏は、さっそく饅頭の箱をあけた。彼は、大の甘党だった。

「疲れたときには、甘いものにかぎる」

 エヌ氏が饅頭を食べようとした、そのとき、部屋のなかがぴかっと光りかがやいた。とつぜん、部屋の壁からぴっちりした銀色の服の、見なれない一人の宇宙人があらわれた。

 ロブ星人はエヌ氏に「それ、ちょーだい」と、手をさしだした。だが、エヌ氏はびっくりしながらも首を振った。

「これは渡せない」

「ちょーだい」

「だめ、これはわたしの大好物なんだ」

「ちょーだい、ちょーだい、ちょーだいよお」

 ロブ星人はエヌ氏に飛びかかり、腕ずくでとりあげてしまった。

 エヌ氏は泣き声をあげた。

 ロブ星人は、エヌ氏の家からかけ出した。そして、山の奥の宇宙船にもどり、大急ぎで銀河の彼方に飛び立っていった。

 

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