君がいない

君がいない


君に殺されたいと強く願ったのに、今ここに君はいない。

君のためなら生きて死ねると強く思っていたのに、今ここに君はいない。

笑いあって手を取って。

熱を共有して、

布越しに触れて、

口づけたのに。


やっぱり君はここにいない。


汗ばんだ肌と、乾いた肌を合わせて。

長く流れる髪に指を通して、愛おしく撫でた。

これは愛だと信じ込みとても幸せだと、思っていたんだ。


何度思い返しても、何度繰り返しても、

やっぱ今ここにいるのは私だけ。



夏の日差しを眩しく感じたことも、

深い青空に沈みそうな秋の元、金木犀のそばで手をつないだ。

凍えて昇る白い息を弾ませて、君を追いかけた。

桜色を眩しそうに眺める横顔を、とても美しいと思っていた。


今、どこにいるのかな。

誰と時間と熱を共有しているの。

同じ時間に居るのに、同じ世界に居ないみたい。

ならばせめて、幸せでいてほしい。

たくさん愛されて、忙しくても忘れるくらい愛されてほしい。

傷なんてすべて癒えてしまって、私のことなんて忘れてしまうくらいに。そこかで笑っていてほしいと強く願っている。

これだけは、本当。


本当にどうか、幸せでいて。

ここには君も私も、居ないから。



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