#2 「孵化予定」

何かをしたら怒られる

何かをしなくても怒られる。

 (だから何もしなかった、

  こっそり息を潜めて)


そうだった、私は望まれてなんかいない。


心の薄暗い場所。 そこで私は膝を抱えてうつむいていた。


(そう思えば少しは楽になった。自分の価値をなくしてしまえば私はからっぽで居られた。)


いつもそうだった。

見えるものに色はなくて、触れるものの熱は感じない。

(感覚を遮断して、無感情のまま。からっぽのまま。

 そうすれば痛くないはずだった。傷つかないでいられるはずだった)


大きな音をたててはいけない。

はしたないことをしてはいけない。

行儀よくして、引き受けなければならない。

痛みも感情の起伏も面倒も、飲み込んでしまわないといけない。

「もっとしっかりして」

「大きな声を出さないで」

「静かにして」

「言うことを聞いて」


そうしているうちに、癖になってしまった。

私の頭から染み付いて離れないようになってしまった。



私は、

何がしたいのかわからなくなってしまった。

自分を押し殺したのは、私。


がんじがらめにしたのも

檻の中に閉じ込めたのも

どれもが私のせい。


私の中の、もうひとりの私


本当の私はそうじゃない。

 もっと楽しく笑いたい。

 私はそれが好きじゃない。

 みんなが望むためだけになんか生きたくない。


そう言えなかったその時の私が、悲しそうな目をしてこちらを観ている。

そうだ。

毎日に押し流されて、置き去りにしてきたもう一人の私。

ずっとそこにいたの。ずっとそこにいたの。


私が忘れている間に、ずっとそこにいたの?


気がついてからは、彼女と一緒に私は毎日を生きることにした。

灰白色の青春は、いつか色を取り戻すと信じて。

彼女の手を握って、歩き出した。


彼女がしたいことは、私ができること。


本当の私は、もっとこうなの。

もっと楽しく笑いたい。

だから、新しいことを始めてみるの。


私はそれが好きじゃない。

こっちのほうが良いと思う。


誰かが望むためだけになんか生きたくない。


私は、私を生きたいの。


これが私。きっと、どれもが私。


自分を押し殺したのは、私。

がんじがらめにしたのも

檻の中に閉じ込めたのも

どれもが私のせいだから。


私が全て壊して

私がすべて作り変える。


その権利くらいは、持っているはず。


だってこれは、私の人生。

選ぶのは、いつだって自分だから。

私がどう生きたって、私の人生だもの。

だったら、精一杯楽しんで、私を生きてあげる。


そこから見てて、もっと遠くから。

道をはずれないように、生きてみせるから。

羨ましくなるくらい、楽しく生きてみせるから。

(愛したい。もっと 寂しくない 生きるの)

産んでくれてありがとう。





こっけ氏 絶望の淵から

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