アキ

きのうのそら。あおいあおい、そら。

きょうのそら。くらいくらい、そら。


よるじゃない。

あけがたでもない。

ゆうがたでもない。


きのうのかぜは、すっきりさわやか。

きょうのかぜは、しっとりたおやか。

よっぱらいのおじさんが、いってた。たしか、こういうの……


「みずもしたたる、いいおんなーってかあ」


うん。そうそう、そういってた。

みずがしたたると、うれしいよね。

つちに水がしたたって、ねっこに水をのませてくれるんだ。


ぽたん。

あ、みずだ。

わーい、雨だ!


おんなのこが、かおをクシャッてした。


「やだ」


つぶやいて、かさをさした。

ピンクのかさ。ヒルガオの花みたい。

かさは、お水をもらえて、うれしそう。


あれ、あっちのおんなのこたちは、かさをささない。

みんなおんなじ、あかいふくで、さけんでる。


「センパイ!ガンバでーす!」


センパイガンバデース?

……あ、まんなかのガンバ。

ぼくのなまえのまんなかとおなじだ。

ヒ『ガンバ』ナ。


うれしくなって、あかいこたちを見にいく。

おそろいのあかいふくは、ジャージっていうんだって。

ちゅうがっこうで、ぶかつをしているみたい。


あかいこたちのセンパイは、あおいジャージで、あかいこたちよりぬれていた。

あれは、あせ。がんばりの水。

たくさんちからをだしたら、からだから水がでるんだ。


ああ「ガンバ」は「ガンバリ」なんだね。

あせとあめで、水びたし。


「みずもしたたる、いいおんなーってかー」


ぴったりのことばかと思ったけど、言ってみたらちがう気がした。よっぱらいのまねっこ、しっぱい。

じゃあ、あかいこのまねっこしようかな。


「センパイガンバデース」


うーん。しっぱいかな……わかんないな。

じゃあ、ぼくのたくさん言ったことばをつかおう。


「ヒ・ガンバ・ナー!ヒ・ガンバ・ナっ!」


あ、これ楽しい。なんだか歌みたい。

ぼくのなまえが、みなみのくにの、ようきなうたになった。


あかとあおのこたちがタオルを持って雨やどりしても、ぼくは楽しくて、ずっと歌っていた。


ヒ・ガンバ・ナー!

ヒ・ガンバ・ナっ!

あははっ!

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