第2話 由子
私は生まれた失敗。
母は安産、中絶費無し。
父が誰かは判別出来ず。
祖母は健在、痴呆症末期。
祖父は厄介者としてやっと死んだ。
生きるだけで精一杯の家庭。
人付き合いは偏ってて問題だらけ。
人脈は広くて深くて、
慕い慕われ、金貸し頼り。
出産は溜め息、
私の存在は疎まれる。
私が泣けば皆殴り、
私が笑えば皆殴り、
私は寝れない、
私が起きれば皆殴り、
私が這えば皆殴り、
私が立てば足蹴。
玩具の存在なんて知らない。
私の食事はない。
私の衣類はどこ?
私の寝床は冷えた地べた。
考える事止めよう。
どこか暗い所に入れられて眼が悪い。
あざや火傷や刺された肌。
ガムテープやタオルで口を括られてる。
いつも何かを握ってないと不安。
頬は抓られる
声を出したら怒られるから出さない。
日を増すごとに窶れてく。
月を重ねて汚らしく。
年を追うごと萎む蕾。
花は萎れる、陽も水もなく。
笑わない。
甘えない。
はしゃがない。
不安。
虚無。
外に出られない。
売られる写真。
幼好輩。
裏で販売。
裏で評判。
手の掛からない女の子、由子。
反抗しない女の子、由子。
覚えの早い女の子、由子。
少し大人の女の子、由子。
お外でいたづら。
おうちでいたづら
夢でもいたづら。
玩具はおもちゃを渡された。
それが由子の最初の玩具。
父の注射に興味を持って、
母のお酒に興味を持って、
客の煙草に興味を持って、
身体の違いに興味を持って、
身体の快楽興味を持って、
犬が由子に抱き付いた。
今日もみんながビデオ撮る。
赤い鞄。
赤い靴。
紺色の帽子。
可愛い洋服。
常連さんが買ってくれた。
同年代の子と遊ぶの初めて。
勉強もちょっと楽しい。
大人がいる学校はあまり好きじゃない。
みんなと大人の人の目、なんか違うから。
私の裸の写真を撮る人達と同じ目みたい。
3組の先生、カメラ持って家来てた。
教科書も持ってきてくれてたよ。
お父さんに叩かれてから少し耳は悪いの。
学校終わったら先生に呼ばれるの。
先生の膝にのっけてもらえるんだ。
撫でてあげたら喜ぶから少し嬉しいの。
たあくんが消しゴム貸してくれたんだ。
嬉しかったから撫でてあげたの。
でも、たあくんはびっくりしてた。
遠足行ってみたかったなあ。
運動会寂しかったなあ。
学芸会は面白くないからしない。
あんまり学校も楽しくないなあ。
家も楽しくないし。
胸おっきくなったの見せたくないなあ。
みんなも見せてるのかなあ。
小学校の六年間。
叩かれるのって痛いなあ。
裸ってちょっと嫌だなあ。
知らない人に見られるのって嫌だなあ。
触られたくはないなあ。
みんなしてるのかなあ。
少しお金は増えたけど。
少女ではない。
女性でもない。
故に悲痛。
心を縛る事も緩める事も難しい。
常識と世間は無言で冷笑。
心は揺れ、酔い、嘔吐。
自分は皆と違う事が解る時期。
当たり前が当たり前でない事を知る時期。
親の暴力は抵抗なく受けた。
親のいたづらは抵抗なく受けた。
身体を見せ物にするのも抵抗なく受けた。
それが普通の家庭だと思っていた。
普通を知らないのだから。
感情が芽生えない。
愛が学べない。
学を投げ出される。
善を理解の前に常識の不知。
培われた醜を普通と理解。
手遅れに近い。
未来はない。
恥を知る。
愛を知らない。
自分を知る。
愛を知らない。
汚れを知る。
愛は知らない。
裸を拒否も報われず。
触れる拒否も報われず。
生きる拒否も報われず。
抵抗も報われず。
何も報われず。
全て報われず。
金だけが報われた。
由子が歩けば男は止まる。
由子が歩けば皆振り返る。
異性同性廉価の花へ。
売女の言葉を投げ掛けられ、
淫婦の言葉を投げ掛けられ、
監禁も数回、
親の借金、
反抗も無駄。
犯され、
撮られ、
売られ、
殴られ、
蹴られ、
捨てられ、
一人で、
同じ、昔と同じ。
変わらず。
愚は得。
逸は得。
背は得。
捨は得。
我を無くせば良。
情を無くせば良。
世を無くせば良。
守を無くせば良。
恥を無くせば良。
朝を無くせば良。
笑を無くせば良。
怒を無くせば良。
涙を無くせば良。
車に轢かれた。
飲酒運転。
二十一歳。
加害者は地位職の運転手。
事件は内々。
死んだ。
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