第491話対策

「さて、朝からこんなものを見せてしまってすまなかった。

今日は待ちに待った大会当日、楽しんでいってくれ。」


そして、アインは兵たちを使って、残った王族たちを大会会場まで送った。


城に残ったアインは、今送った王族たちの対処の方を急いだ。


今回に関しては、アインのほうに正当性はあっても、勝手に他国の王族に魔法を使って、しかも、勝手に自国に帰したという事実に関しては、何も変わっていない。


これから、その国たちから文句をつけられるかもしれない。


しかし、何も問題ない。


それに、今回の参加国に関しては、そんなに大きな国は少ない。


バルバロット帝国の隣国であり、アインの故郷でもある王国に関しても、だんだんと強くなってきている。


言ってしまえば、王国は一番成功しているのだ。


もともとアインの故郷ということもあって、アインはこの国に対しては比較的ひいきをしている。


しかし、それに関しては独裁制のトップが決めていることなので、誰も文句は言ってこない。


そして、王国のほうも、自分たちに好意があるということを鼻にかけて、威張り続けているのではなく、しっかりと帝国との力の差を分かった上での協力を申し出ている。


そして、陸続きということでほかの国に比べて、支援もしやすい。


このような要因から、バルバロット帝国に一番影響を受けていて、しかもその影響がすべて良い方向に行っている国だろう。


そんな王国も、今回に関しては、もしも今回強制送還した国々が文句を言ってきた場合には手伝うように言ってくれている。


「それでも不安だからな。」


彼らは暗殺者を持っていた。


つまり殺すための金はそこまで惜しんでいないのだ。


だからこそ、浮遊魔法を使えるような魔術師がいる可能性も十分あった。


そのため、アインは今回、今まで以上に空中に対する警戒を強めた。


(まぁ、そんなことを言っても、そこまで行動はしないんだけどね。)


現状でも、結構空中の対策はできている。


そんなアインがとる空中対策というのが、大陸全土を薄い魔力で覆うというものだった。


これによって、何かが通過した際にはアインにすべての情報が入る。


しかし、本当にそんなことをしてしまっては、大陸の周りにいる魚が通るだけでもアインに情報が行ってしまう。


そんなことになってしまえば、アインのほうが先にパンクするだろう。


正確にはパンクはしないだろうが、それこそ侵入者の情報のほうを見忘れてしまうかもしれない。


そのため、今回に関しては、その魔力膜を通った人間だけを対象にしていた。


(よし、これだけでいいかな。

正直、入ってしまっても、簡単に捕まえられるだろうしな。)


そう考えたアインは、さっさと、自分も大会会場に向かうことにした。


そこでは、すでに選手たちが事前準備を始めていた。


今回は、初回ということで、ダンジョン内の情報については何も知らされていない。


だからこそ、選手たちの装備も、慣れ親しんだダンジョンを降伏するようではなく、道を覚えられるようにするための地図なんかを持ってきていたり、もしかすると暗闇かもしれないということで、光魔法を応用された魔道具を持っているような選手がいた。


(さて、そろそろ始まるな。)


そう確認したアインは、自分専用の席に転移したのだった。

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