第446話進軍スピード


この親玉の登場は、お互いの陣で予想外の出来事だった。


まず、アイン側からしてみれば、貴族たちは自分たちの兵が先勝の話を持ってくるまでは自領に引きこもっていると思っていたのだ。


だからこそ、このように決着がつく前に、貴族が来ることは想定の範囲外だったのだ。


そして、貴族側からも予想外のことがあった。


それは、まだ王都が落ちていないことだ。


事前の調査で、王都の兵が今回の貴族が合わせて作った大軍よりも圧倒的に少ないことはわかりきっていた。


しかし、実際に王都に来て見れば、まだ王都が攻め落とされたような様子はなく、それどころか、自分たちの兵の姿がなくなっていた。


しかし、このことはアイン側からしてみれば悪い話ではなかった。


敵がさらに来たという意味ではだめなのだが、それでも現況が自分からやってきてくれることはうれしい事だった。


これによって、どの貴族が参加したのかがすぐにわかり、それに今回王都に来ていない人たちも彼らの口から漏れ出すことだろう。


「よし、それでは、各隊は貴族だけは生かしてとらえてこい。

他の兵に関しては、自分たちで判断して捕まえるのだ。」


アインからそのような命令を受けた帝国兵は、同じく一緒に戦う王国軍の反応を待った。


王国側からしてみれば、自分たちの国民を殺すことなので、できればやりたくはないと思っているだろうが、それでも最終決定を下すのは上司だ。


それに、この王国は最高決定権は国王にあるが、軍部には最高司令官がいる。


王様に確認に行く時間がないときや、確認する必要がないとき、そして、確認する手段がないときなどは、軍については彼が決めていいことになっている。



しかし、この権力はあくまで国王の下なので、王国に反乱や、軍単の縮小なんかを勝手にやろうとした場合は、その立場から追い出されることもある。


「しょうがない。今回に関しては、彼らは反乱軍だ。

すでに我々の国を捨てて、暴力ですべてを解決しようとしている怪物と同じだ。

帝国兵との協力もある。

彼らと同じように、犯人を割り出すためにも、貴族以外の者の殺害は許可をする。」


王国側も、兵を殺す覚悟をもう一回したことによって、両軍は貴族たちの兵たちのせん滅に動いた。


まず、まだ敵に関しては後方にいるので、小さい魔法でちまちまと1人ずつ殺していった。


なぜ、大きな魔法を使わないのかというと、大きな魔法を使ってしまえば、貴族まで死んでしまう可能性があるからだ。


そもそも、そんなに簡単に死ぬのか?という疑問もあるが、貴族は簡単にしぬ。


もしかすると、まったく魔法が当たらなくても、近くで大きな魔法が発動するだけで死んでしまう可能性がある。


これは、貴族が弱いからではなく、そのような環境にいたことがないからだ。


基本的に、戦場には兵を送る。


実践訓練では相手が結構手加減をしてくれるので、本気で戦ったことがないのだ。


しかし、それでも貴族たちの恐怖によって、だんだんと進軍スピードが衰えていった。


進軍スピードが衰えてくれれば余計に狙いやすいのに、それでも彼らは足を止めていくことしかできなかったのだった。



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