第391話聞いてはいけない親子の会話


その後、転移で、アインは公爵家に向かうことにした。


「どっちから先に行こうか…」


そんな事を悩んでいると、横からリリスが


「近いほうで良いんじゃない?」


と言ってきた。


「でも、貴族って基本的に、順番とか気にするじゃん。だから、考えたほうが良いのかなって…」


「そんなこと無いわよ。それに、貴族にもしもそういう人がいたとしても、彼女たちは違うわ。」


この国の王女様にそういわれてしまえば、それを信じるしかないので、アインは王都から近い、セシリアのほうに行くことにした。


「さて、あっという間についてしまった訳だが…」


そこには、なぜか王城よりも照明がついている公爵家があった。


「入って良いのかな?」


「何をためらっているのよ。入らないと何も始まらないわよ。」


そういわれたので、アインは玄関についていた呼び鈴を鳴らした。


「はーい。」


すると、中からメイドが1人出てきた。


「アイン様とリリス様。

良くぞ来られました。

ただいま、当主様と、セシリア様が大事な話しをしているそうなので、応接間にてお待ちください。」


そして、2人は比較的大きな部屋に案内された。


そして、アインは普通の人よりも耳が良くなっているので、親子の会話が聞こえてきてしまった。


『セシリアよ。分かっているな?』


『ええ、最近はアイン君となかなか会うことが出来ていない。だからこそ、今日でアイン君の心をより一層つかむのですね?』


『ああ、ついでに既成事実でも作って来い。』


『…さすがに難しいと思います。なんか真面目な顔でしたし。』


『そうか。それじゃあ、1つだけ当主として命令を出す。

泊まって来い。』


『それは…そのままの意味ですか?』


『ああ、泊まって来い。だからこそ、今日に限っては帰宅を許可しない。

泊まってくるのだ。』


『分かりました。お父様のお気持ちに反しないように気をつけながら、絶対に成果を挙げてきます。』


『よく言った!言って来い!』


『はい!』


そんな、会話が聞こえてしまったアインは、若干青い顔をしていた。


(さっき、青い顔をさせてしまったばかりなのに、自分が今はしているとは…)


そんな冷静さもあったが、それでも焦っていた。


なぜなら、アインが今回、セシリアを泊めさせなくては、セシリアは野宿か、安全性もない宿で泊まるしかない。


そんな事をすればアインの評価は下がるし、アインもそんなことはしたくないと思っていたからだ。


つまり、セシリアがアインの家で泊まることが決定してしまったのだ。


しかし、城に泊まるのも久しぶりなんじゃないか?


アインは今でも使っているが、セシリアにとっては、前に止まってから使っていない城だ。


しかも、回想も難解もしているので、昔とは若干異なっているのだった。


(エリ。今日、セシリア泊まる。準備しておいて。)


(アイン様、大丈夫ですか?変な片言になっていますが。)


(大丈夫だ。問題ない。)


そんなフラグを言ってしまうくらいには、今の会話は聞いてはいけないものだった。


しかし、そんなアインをおいて、時間というものは過ぎていく。


セシリアが来たのだった。


「待たせた?」


「そんなに待ってないよ。」


「それは良かった。」


今、セシリアの背中には会話をしに行くにしては多すぎる荷物が背負われていた。


「それじゃあ、行きましょうか。」


そういわれたアインは何も言わずに次の場所に向かっていくのだった。


そして、リリスは大きな荷物を背負ったセシリアに疑問の視線を向けたのだった。


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