第363話戦争の終結


どんどん壊れていった、教会の大聖堂は、すでに跡形が消え始めていた。


「皆!一旦この部屋から出るんだ!」


隊長がそういうと、隊員たちは一斉に教皇の部屋から出て行った。


ちなみに、教皇にとっては部屋から出た瞬間に殺されてしまうので、出ることが出来なかった。


「よし、全員出て行ったな…『大爆破』」


隊長がそういうと、隊長の魔力が連鎖反応を起こしながら、どんどんと、爆発していった。


ちなみに、隊長は自身の体の周囲に魔力による防御をしていたので、大丈夫だった。


もちろん、教皇も部屋の効果によって無事だった。


しかし、無事じゃないものもあった。


それは…


「よし、これでこの部屋は完全に壊れたな。」


そう、教皇がいる部屋だった。


この部屋は今となっては建材の石がそこら中に散らばっており、もちろん、効果も失われていた。


そして、隊長は肝心なことを果たすために、教皇の姿を探した。


しかし、教皇の姿は見当たらなかった。


「まさか…逃げられたのか!」


ここで教皇を逃がしてしまっては、この戦争の完全勝利とはいえなかったので、兵の士気を向上させるためにも、教皇だけはちゃんと倒したところを後悔しなくてはいけなかったのだった。


「全員、中に入ってきて良い。全力で教皇を探すんだ!」


そして、外にいた兵を全員使ってまで教皇を探すことになった。


その後、石の下から教皇が出てきた。


彼の意識はすでに無く、死んでいた。


しかし、その死に方は石に押しつぶされて死んだのではなく、今回はずっと石の下で息が出来なくて死んだようだ。


よって、教皇が石の下から掘り起こされたときには、まだ、教皇の体は五体満足で残っていた。


「よし、こいつが教皇だということは市民にも分かるくらいには、原型が残っているな…それじゃあ、一旦帰るとするか…」


現在、アインがタートとして戦っている国は他にもあるが、それでも今回の戦争の一番大きな敵は教会だったので、その教会のトップであった教皇の死体は、一旦、他の国に攻め込むことをやめてでも、早くアインの元に届けなければいけないものだったのだ。


この後、しっかりとアインの元には教皇の死体が届いた。


それを、同盟国、そして、教会側の国にも公開をした。


アインがわざわざ教皇の姿を敵にさらしたかというと、士気を下げるためだ。


最初の頃は、教皇とは不死の存在であって、神の寄り代として、最高の祝福を受けているものだと民衆には伝えられていた。


そして、その教えを信じて大国の兵たちは今まで、教会のためにもがんばってきたのだ。


しかし、その不死の存在であった教皇の死体だ。


この出来事は大国側の市民には2つの印象を植え付けた。


1つは、実は神なんかいなかったんじゃないか説


2つ目は、もしも神がいたとして、向こうには、こちらが信仰している神よりも、もっと上位の神がいるんじゃないか説。


この2つが民衆の中では噂になっていた。


どちらにしろ、これは民衆の心が意識しないうちに、すでに敗北感を受けている証拠だった。


そして、信じていた宗教が嘘だったのかもしれないということで、そんな宗教のために命をかけられないという人も出てきて、大国の各国で内戦のようなことも起きていった。


内戦に関してはアインにとっても驚きの出来事だったが、民衆が政府に対して不信感を抱くということは当初の予定でもあったので、これはその効果が大きくなりすぎたのだと思って、何とか納得をした。


結局、内戦に関しては、同盟国が内戦を起こした側に対して、大きな支援をしたので、大半の内戦は、反教会派が勝った。


そして、内戦に勝利した教会派も、内戦で疲弊しているところを同盟国に襲われて、すぐに降伏をする羽目になった。


こうして、全ての大国が降伏をしたことによって、この大陸の殆どの国を巻き込んだ、大陸戦争は終結したのだった。


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