第160話聖なる勇者対聖なる者


「話は聞かせてもらったぜ、この最強の勇者たちがな。」


エリは勇者を誘い込むためにここまでやってきたのに、向こうから絡んできてしまったのだ。


「なんなんですか?あなたたちは。」


「何!?俺たちのことを知らないだと?」


「なるほど、さては今日この街やってきたのだね。」


「そうに違いないわ。だってこの街に住んでいて、私たちのことを知らないなんてありえないもの。」


勇者たちが自分の知名度自慢を始めてしまったので、エリは帰ろうとしたが、逃がしてはもらえなかった。


「君なんで帰ろうとするのだ?この俺たちが話しているのに。」


そんなことを言われても、エリはこの街に今日始めてやってきたので、分からないを突き通そうとした。


「そんなことを言われても分かりません。私は今日この街に始めてきましたから。」


「やっぱりか…この街に住んでいて俺たちのことを知らないなんてありえないよな。」


そして、最初の話に戻ってしまいそうになったので、エリは早く帰ろうと、話しかけてきた事情を聞くことにした。


「何で話しかけてきたのですか?」


「ああ、実はさっきの受付嬢との会話が少しだけ聞こえてきたのだが、この街の付近にダンジョンが4つもいきなりできたそうじゃないか。」


「そうですね。私がこの街に向かってきていたらいきなり現れたのですよ。」


「そうなのか。それでどんなダンジョンだったのだ?」


「まだ、入っていないので中は分からないですが、入り口に難易度が書いてありました。」


「それは珍しいダンジョンだな。それで、難易度はどれくらいだったのだ?」


「簡単に、初級、中級、上級、たとえ勇者であっても攻略できないダンジョン。の4つに分かれていました。」


「何だと?勇者に攻略できないダンジョンなんてあるわけ無いじゃないか。」


「しかし、実際に書かれていましたので。」


「それではそのダンジョンはすぐにでも俺たちで攻略しなければならない。」


「行くのですか!?まだ上級の中もわかっていないのに…」


「ああ、それでも行くね。そんなダンジョンがあってはこの国の民になめられてしまう。」


「なめられたら問題があるのですか?」


「ああ、なめられてしまったら、簡単に命令に従わなくなるだろ。」


「まさか市民に命令をしているのですか?王でもないのに?」


「何だ知らなかったのか?この街では俺たちは王の次に偉い。そうだ、お前も俺たちのグループに入るか?ダンジョンで肉壁でもしてやるよ。ちなみにこれは命令な。」


簡単に命令をしてきた勇者にエリはそろそろ切れそうになっていた。


「嫌です。肉壁なんてなりたくありません。」


そう言うとこっちに聞き耳を立てていた冒険者が騒ぎ出した。


「おいおい、大丈夫かよ。あの勇者の命令に逆らったぞ。」


「大丈夫じゃねぇだろ。あいつこの後平原に連れて行かれるぞ。」


そんな言葉が聞こえてきていたが、正直に言ってエリにとってはこれは好都合だった。


「おい、女。勇者の命令に逆らったお前には罰がある。」


「何ですか?」


「俺の仲間には転移魔法がつかえるようになった奴が1人いるんだ。それで俺たちと一緒に平原に飛ばす。」


「そこで何をするのですか?」


「それは着いてからのお楽しみってことで…やっちまいな。」


そう言うとエリと勇者たちは平原に飛ばされた。


「ん~。ここは良いぜ。なんたって血の匂いがすぐに消えるんだからな。」


そして勇者の中でも3人がそれぞれ剣、槍、弓を取り出した。


「まさか集団リンチですか?」


「やっと気づいたか。しかもこの剣、槍、弓は聖なる天使の魔力を使っているから、絶対に防げないんだぜ。」


「天使…ですか。」


「いないと思うなよ。実際にいたらしいし、この聖剣も実際にすごいからな。」


「攻めて最後まであがいてくれよ。」


そう言うと勇者たちは一斉に攻めてきた。


しかし、剣は折れ、槍はへこみ、弓での攻撃ははじき返された。


「何だ?何でこの剣が折れるんだ?」


「幸い、周りにはあなたたちしかいませんし、見せてあげましょうかね。」


「何を言っているんだ?よくも俺の剣を。」


「天界は位によって圧倒的な力の差ができるのです。だから…」


そして、エリは空中に飛び、大きく、綺麗で、光り輝く翼を出した。


「熾天使である私に、一介の天使が作った武器が通用するわけ無いでしょ。」


種族として圧倒的勝者による断罪が今、始まる


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