南国防衛戦後編
「必殺スキル…か。カルマ、お前がやれるのは半分なのか?」
「ああ、俺の必殺スキルは馬鹿みたいに魔力値を持っていかれる。だから、あの数全ては無理だ」
カルマの必殺スキルで倒せるのは半分。現在、他の近接部隊は地上へ降りた
「分かった。なら、俺も協力しよう」
「…なに?」
「俺も使用するんだよ。…必殺スキルを、なっ!」
迫っていた
「コースも使えるのか?!」
「まあな。それでどうする?」
「是非頼みたい!…が、問題は『詠唱』時間を誰が稼ぐかだな」
え?詠唱?何それ俺知らない。この時の俺の頭上には、きっとクエスチョンマークが浮かんでいたことだろう。
そんな俺を見たカルマは不思議そうな顔で、此方に振り返った。
「まさか…詠唱を知らないのか?」
「え…うん」
「それじゃあコースの必殺スキルには詠唱が必要ないのか?!」
「多分。今まで詠唱なんて使ったことがない」
いや、そんな『何言ってんのコイツ』みたいな顔されても。使ったことないんだから仕方ないだろ。
「なら、コースに時間稼ぎを頼む。そうだな、1分程度くらいだな」
「了解…っと!」
左右から飛び掛かってきた
カルマが瞼を下ろし、大きく深呼吸をした。詠唱が始まる…!
「『我欲するは不滅なり』」
剣を自身の前に突き出し、言葉を発した。
「『全ては滅び、全ては無に還る』」
カルマが持つ聖剣デュランダルに、光が集まっていく。これまで見たことがない程の輝きを放ち、力の凝縮を示すかのように1つに纏まっていく。
「『世界に終焉が訪れて』」
俺は片手でカタストロフィを振りながら、神威を実体化させる。
龍種の目線は一斉にカルマに集まった。だが、誰一人行動を起こそうとはしない。
「『万物が滅びようとも』」
カルマはゆっくりと瞼を上げ、異様な輝きを放つデュランダルを鞘に納めるように引いた。…今だ!
「『この剣のみは悠久の時を駆け抜けた』!行くぞ、コース!―奥義『
「分かってる!―秘奥義『雷切』!!」
俺はカルマと同じタイミングで神威を振り抜いた。
カルマの必殺スキル『
それに対し、ただ強烈な一撃を与える雷切。発動する度に威力が増加していくスキルを持つ神威は、初期の雷切を遥かに上回る威力を発揮した。
四方から聞こえる龍種たちの断末魔。中には命乞いに聞こえるものもあったが、それも直ぐに消えてなくなった。
数秒後、その場に龍種の影は無く、あるのは静寂と陽の光だけだった。
ギルドに戻った俺たちは、イカル主催の下、祝勝パーティを楽しんでいた。勿論、俺はイカルの隣の席だ。
「コースさん!最後に使ったあのスキル!一体何て言うスキルですか?!」
「今度特訓してください!コースさん!」
さっきからこういう冒険者が俺のところにやって来る。南国防衛戦ラストで俺は『雷切』を使った。即ち、それは俺が『
「ああ。時間があればな」
それだけ伝えると、冒険者たちは自席の方へ戻って行った。こんなに注目されることが無かった分、無駄に疲れる。
「人気者だな」
「ほぉ、イカル。そんな人気者の俺からお前にプレゼントだ」
俺は手元にあったフルーツの果汁を、イカルの顔にぶっかけた。
「ぎゃああああ!」
席から転げ落ちながら、目を擦るイカル。どうやら、柑橘系のフルーツだったらしい。初めて見るフルーツだったから仕方ねえな。うん、避けなかったイカルが悪いことにしよう。
「コース…何てことするんだ」
「まあまあ、悪気は無かったと思うぞ。それよりも、ほら!このジュース飲んでみろよ!」
「お前の事だろう!なんで他人事みたいに言ってんだよ!…ったく!」
そう言いながら俺の手からコップを奪い取り、中の赤い液体を飲み干した。直後、イカルは喉を押さえながら苦しみだした。
どうした、どうした。これって飲み物だよな?…あれ、なんか書いてある。えーと、『激辛ソース※お好きにご使用ください』?あ、これ飲み物じゃねえ。なんでコップに入ってんだよ。
「お、おおお客様!お水です!」
慌てて出てきた店員に渡された水によって、イカルは少し楽になったらしい。
「ぷはっ!はっはっ」
「おいおい、発情期の犬かよ」
『はっはっ』ってのが、家で飼っていた犬に似ていた。あの駄犬、俺の布団をトイレ代わりにしやがるし、発情期になると静かに近付いてくるし。怖かった。まあ、イカルは弄ばれるタイプだから俺の飼っていた駄犬とは違うか。
「きっ貴様ぁぁぁ!!」
「ああ?!…うわっ!!」
掴み掛かってきたイカルの頭を押し返しながら、口論を繰り広げていると、いきなり剣先が俺の頬を掠めていった。この剣、見たことある。
恐る恐る振り向くと、冷徹な笑顔を浮かべたハノナが立っていた。
「…コース?お迎えに参りましたよ?」
「何故に疑問系?そして、何故に敬語?」
「帰るぞ!コース!」
「…はい」
俺はパーティを最後まで楽しむこと無く、ハノナに連行されてしまった。あ、イカルは次あった時に斬る。絶対だ!
「コース!」
「…ごめんなさい」
ハノナの読心術は相変わらずだった。
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