南国創国記念祭
「わあああ、すっごく賑やかだね!」
「わああ…んんっ、確かに賑わっていますね」
なぜ無理してまで大人振るのだカノさんや。
確かに賑わってはいるが、少し五月蝿すぎる気もする。あの人はお面を3つも着けて、こっちの人なんて金魚の入った袋を4つくらい持ってるぞ。それ金魚は大丈夫なのか。
「コース!早く行こう!」
「待て!引っ張るなよハノナ!」
「コース、諦めてください。ああなった彼女は止められません」
腕を引っ張られ足を進める俺に続くように、みんなが歩き出す。
今夜はお祭りだ。それも中途半端な祭りじゃない。この南国で最大の祭り、
この祭りには南国下で強い権力を持った人たちの参加が強制されているらしい。さっきからちらほらいる豪華な衣装の人がそうだろうか。
「お兄ちゃんっ!サクラあれ食べたい!」
サクラの指差す先にあるのはリンゴ飴だ。サクラ位の年の子はみんなリンゴ飴が好きなのかな?カノも目をキラキラさせてるし。
たまには買ってやるか。
「ああ、いいぞ。カノも行くだろ?」
「ふぇえ?!…んんんっ!そうですね。…いえっ!私は遠慮しておきます。リンゴ飴なんて子供っぽいもの」
言い直したけど、本音が隠れきって無かったぞ。そんなに大人振る必要はないと思うんだがな…。まあ、そういう年頃か。
「なら、いらないのか?」
「うっ…、そ…れは。美味しそ…はっ!駄目です!子供っぽいのです!」
「そうか。分かった。行こうかサクラ」
俺はハノナとグリアに此処で待つように頼み、サクラの手を引いて歩き出した。サクラの満面の笑みはまさしく天使。一生側で守ってあげたい!
「ち、ちょっと待ってください!」
「どうした?」
「いえ、あの、リンゴ飴ですね。あれって子供っぽいとは言え、大人も食べる人は食べるじゃないですか。なので…別にどうしてもというのなら食べてもいいですよ」
それは食べたいと解釈してよろしいので?まあ、リンゴ飴は老若男女問わず人気だよな。別に恥ずかしいことじゃあないんだけど。
「よし、分かった。カノ、サクラ行こうか」
「はいっ!」
「早くっ!早く行きましょう!」
カノとサクラに引っ張られ、俺はリンゴ飴屋へと足を早めた。サクラよりカノの手を引く力が強いのは気のせいだろうか。
人混みを掻き分け、2人と共にリンゴ飴屋の前まで辿り着いた。列は出来ておらず、むしろ寂しさすら感じさせる程誰も居なかった。店主は涙目で5軒先の店を睨んでいる。周りの店の店主も同様に、だ。
その視線を追い、店主たちと同じ方を見る。サクラとカノも気付いたようで、俺と同じタイミングで目線を動かした。
「キャアア英雄様よぉぉ!」「イカル様ぁ!こっち向いてぇ!」「ふふふ…。英雄様は私のもの…」
そこでは英雄イカル・ネシオンが店を開いていた。この国のアイドル的存在の英雄だ。当然、その周囲にはファンが集まっている。つか、ファンしかいない。既に商品が完売しているにも関わらず、客が一向に散る気配はない。むしろ、更に集まってきている。…あの店には絶対に近寄らないようにしよう。
「サクラ、カノ。あの店には絶対に近寄るなよ。なんなら見ない方がいい」
「分かった!あの人は基本無視って事でいいんだよねっ!」
お、おおう。サクラってかなり酷いな。そんな天使の顔でなんてこと言うんだ。こら、カノも頷かない。
「早く買って帰るぞ」
これ以上好き勝手に言わせると、噂を聞いた時にイカルが逝きかけない。俺なら逝く。それは流石に可哀想だ。
「兄ちゃん!うちのリンゴ飴を買ってくれるのか?!」
「ええ。3つください」
「ありがとう!ほんっとうにありがとう!」
リンゴ飴3つ買っただけなんだが。祭りの店で食べ物買ってお礼言われたのなんて初めてだ。
俺はお金を渡し、貰ったリンゴ飴をサクラとカノに渡した。
「あれ?お兄ちゃんも食べるの?」
「いや、ハノナの分だ。待たせてるからな、そのお礼だ」
「ふぅん。ラブラブなんだ」
おい、興味が無いなら聞くな。あと口の周りに溶けた飴が付いてるぞ。
サクラの口周りに付いた飴を、カノがハンカチで拭き取っている。カノは意外と面倒見がいいのか?しかし、こうして見ていると姉妹みたいだな。
「コースさん。ハノナさんたちのところに戻りましょう」
「そうだな」
そう言って歩き出した俺たちの目の前にはハノナとグリアがいた。…なんで?
「遅いから迎えに来た。リンゴ飴を買うだけなのに時間をかけすぎじゃないか?」
「ああ、ごめん」
今、普通に心読んできたよな。やっぱりハノナって読心術的なスキル持ってるんじゃないか?
そんなことを考えていると、ハノナが急に頬をうっすらと染めながらソワソワしだした。
「どうした?」
「いや、なにその。あたしもリンゴ飴が…な?」
「欲しいのか」
静かに頷くハノナ。頬が更に赤くなる。くそっ、ちょっと可愛いと思ってしまった。パーティメンバーにそういう感情を抱くと、後々の関係が崩れるから無視してきたのに。今回は無理だったか。
「ほら、ハノナの分だ」
「…あ、ありがと」
きっと俺の顔も赤くなっている。自分で分かるほどにドキドキしていた。
そんな俺とハノナを置いて、グリアたちは何処かへ行ってしまった。去り際、親指を立ててきたグリア。いらない気を使ってくれたのか。
リンゴ飴を舐めるハノナと、それを隣で見ている俺の後ろで花火が上がった。祭りの終わりを知らせる特大花火だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます