それは高い山か穏やかな丘か

カゲトモ

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 絶世の美女、なんて言葉があるけれど、実際絶世の美女は結構沢山居たりする。絶世とは“この世に並ぶものがないほどにすぐれている”と言う意味だとか。言葉通りなら絶世の美女はこの世でたった一人のはず。でも世の中にはいろんなタイプがいる訳で。

絶世の美女、っていうのもどんなのをイケメンと言うか、ってくらい個人差があると思う。他の人はイケメンって言うけど、俺からしたらそれほど、みたいな感じ。それくらい“絶世の美女”もあやふやなものだと思う。だから世の中に絶世の美女が何人いてもそれが当たり前なわけで。物の例えってやつだし。

けれど、目の前にいる彼女は百発百中で全員が絶世の美女と言うだろう。しかも天然ものだぞ。

「はぁ」

 そんな絶世の美女は小さくため息を零した。きっと色を付けるなら薄ピンクだろう、なんて。

「何か悩み事ですか」

 美女は伏せていた目蓋を持ち上げて視線を合わすと、ふ、と苦く笑った。

「ちょっと困りごとがあって」

「困りごと、ですか? 私で良ければお話し聞きますよ」

 ロベルタの入ったショートグラスを遊ぶように回していた手を止めて、ハナさんは眉を下げたまま口を開いた。

「実は、新入社員の子達となかなか仲良くなれなくて」

「新入社員さん、ですか?」

 確かハナさんは輸入商品の会社で働いていたはず。海外との取引もあるとかで、何となくコミュ力の高い人が多そうな気がするけど。

「確かにコミュニケーション能力の高い子が多いとは思うんですけど、なんだかよそよそしいって言うか。同期の子とか見ていると、新入社員の子と仲良くしているし。やっぱり私、取っ付きにくそうなんでしょうか」

「おや、どうして?」

「だって、今まで出会ってすぐに仲良くなれたような人、いないんですもの。同期の子も、入社してからしばらく経ってやっと普通にお話しできるようになりましたし。私自身、そんなに人見知りとかしませんし、男女関係なく仲良くなりたいなって思っているんですけれど」

 ハナさんは元気のない花のように小首を傾げる。うーん、それはハナさんに問題があるって言うより、周り、じゃないだろうか。だってこんな美人、軽々しく話しかけたりできないじゃないか。照れちゃってさ。

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