あなたの望みを受け付けます

カゲトモ

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「あなたの望みを受け付けます?」

 朝食を食べ終えてもまだ雨は細かく降っていて、外出しようかどうしようかと考えつつも、この間発売した新刊を読みたくなって外へ出て来た。雨は思ったよりも凄く弱くて、でも買った本が濡れるのは嫌だからちゃんと傘をさす。足元が大事故にならなくて本当に良かった。

 行きつけの本屋はアーケードのない通りの一角にあって、マニアックな、いや普通の本屋だとなかなか置いていない本がたくさん置いてある。俺の好きな作家さんの本もこの辺りだとここにしか置いていない。見た目は普通の本屋なのにな。店員さんだって愛想がいいし。

 そんな本屋の帰り、ふと一つの看板に目が留まった。木製の小さな看板には《あなたの望みを受け付けます》と怪しげな文章が書かれてある。なにこれ、占いの館?

 チラリ、と脳内に近所の良く当たる占い師が浮かぶ。占いの館、ありえなくない。

「・・・」

 ま、別にどうでもいいんだけど。俺の望みは受け付けてもらわなくても。てかなんか怪しいし。

 望みを叶える代わりに高額な壺とか売り付けられても困るし。こういうのには近づかない方が身のためだ。うんうん。

《あなたの望み受け付けます。この角を曲がって十八歩》

「十八歩・・・」

 十八って何。誰の歩幅で測ったの。ってか何の店なの。今まで何度もこの道を通っているのに何で俺こんなに気になる看板を知らなかったんだろう。凄く気になる。十八歩めっちゃ気になる。

 ・・・本当はこの角を曲がる必要なんてないんだけど、十八歩くらいなら・・・ちょっと前を通るくらいなら行ってもいい、かな、なんて。

 別に店に入らなければいいし、どんな店か見るだけだし、十八歩歩くだけだし。

 いーち、にーい、さーん・・・

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