その恨み、運びます

@zackysakihama

第1話 始まり

人は誰だってこの世に生を受けた瞬間から死が決まっている


どんな偉いやつも、どんな惨めなやつもその死の定めからは逃れられない


だがその死には様々な形がある


まともな看病も受けられず、座して死を待つもの


潤沢な富を使い万全な状態で死を受け入れるもの


これはこの世に恨みを残し、それを届ける怨念の配達者達の物語である






『くそがっ!なんで俺がこんなところで死ななきゃならねぇんだ


ただ、ブツを運んで終わりじゃなかったのかよ』


1人の男の叫びが脳内を駆け巡る


彼は運び屋 依頼があればどんなものでも運び、金を貰ってきた。しかし今回は違った。


ブツは運び終えた。仕事は終わった筈だった。しかし背を向け立ち去ろうとした瞬間だった。背中に感じたことのない痛みと熱さが広がった。胸を見た瞬間、事を理解した。撃たれたのだ。


彼は今、埋められている途中である。それも生きながらにしてだ。出血により意識が遠のき、土で呼吸も絶えだえだが、彼はもがいた。どうにか身体を動かし、目の前のくそったれどもを殺してやる。そう思い、行動しようとした。だが、身体は反応してくれずにただただ土の味が口に広がるだけである。言葉は出ず、土が口という名の空洞を塞ぎ身体から血を奪っていく。彼は死ぬ。これはもう変えられぬ事だ。そう感じた時彼は土に完全に埋もれた。


その時である。


その恨みどうします?


そんな声が聞こえた。


死にかけていた筈の自分に話しかける声とは何か?


男は目を開けた


その瞬間である 男は何もない空間にいた。


その恨みどうします?


あの声だ。


男は叫んだ。


『誰だ!そしてここはどこだ!』


すると何もない空間から1人の男が突如として現れた。


『答えてあげましょう 私は配達者 担当は恨みとか様々です。そしてここは生と死の狭間の世界です。まぁ待合室くらいに思ってください。貴方は非常に大きな恨みをもって死にました。こちらとしてはそれをそのまま生まれ変わってしまうと困るんですよねぇ』


目の前の訳がわからん男はそう言っていた。


配達者?生と死の狭間の世界?意味が分からん。そんな宗教聞いた事ないぞ


『だって生まれ変わる際には記憶を消しますんで』


男は俺が口にしていない事に返答した。


どうやらこいつは本物の化け物で俺はその化け物に選ばれてしまったようだ


『正確には貴方の恨みが私を呼んだんですけどね』


話さずに意思が伝えられるとは楽でいいや


おい、化け物。さっきから恨みがどうたらいってるが、恨みがお前になんの関係がある。


『さっきから言ってるじゃないですか、私は恨み担当の配達者だって分かりやすく説明致しますんで、聞いておいて下さい』


奴の話を整理するとこうだ


まず、この生と死の狭間の世界は基本の人間は通らない空間である。巨大すぎる恨みや妬みなどを持った者の願いを叶えるために存在している。誰かを殺したい。妬みの原因をどうにかしたい。そんな人間がここに来るのだという。


『じゃあ俺を殺したあいつらを消せるのか?』


答えはYesだった しかし、Noでもあった。


おれが望むような死。例えば俺が復活して直接殺すとかは神の規定により許可されていないらしい。許されている殺し方は人生への干渉での死だという。


例えば、奴らが列車に乗ったとする。その列車のブレーキを故障させ、運命を終わらせる。そういった殺し方はOKなようだ。俺に許可されているのはあくまで間接的な殺し方。そういう事だ。それだと、殺せない可能性もあるんじゃないか?と思ったが、俺はもうそれでもよかった。奴らが俺の人生を終わらせたようにあいつらの人生も終わらせることの出来る可能性が転がってきたのだ。利用しない手はない。


おい、配達者とやら、恨みを晴らしたい。俺はどうしたらいい?


『簡単です。代償を払ってくれたら運命への干渉の権利を授けます。』

『そうしていただけたら、あなたの恨み、運びます。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

その恨み、運びます @zackysakihama

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る