言霊学士コトリ 古城の迷宮

プロローグ

コトリ＝ヴォキャブラリ。

北（きた）の僻地（へきち）、メレッツェ村（むら）出身（しゅっしん）の平民（へいみん）。

旧（きゅう）ヒャメロー大学院（だいがくいん）、【言霊（ことだま）科（か）】専攻（せんこう）。

文系（ぶんけい）学科（がっか）において抜（ぬ）きん出（で）た天才（てんさい）であり、大学院（だいがくいん）も首席（しゅせき）で卒業（そつぎょう）している…………。

そんな彼女（かのじょ）だが、周囲（しゅうい）の者（もの）が中々（なかなか）取（と）らない科目（かもく）である【言霊（ことだま）科（か）】を専攻（せんこう）し博士号（はくしごう）を取得（しゅとく）したのにはしっかりとした理由（りゆう）があった。

言葉（ことば）の力（ちから）なるものを信（しん）じているからである。

だから彼女（かのじょ）は、言葉（ことば）の奥深（おくふか）くに眠（ねむ）る力（ちから）の本質（ほんしつ）、【言霊（ことだま）】を学（まな）ぼうと志（こころざ）したのだった。

そして【言霊（ことだま）学士（がくし）】となったコトリ。

その日常（にちじょう）について、或（ある）いは彼女（かのじょ）について、ここで記（しる）しておきたいと思（おも）う。

これはどこか遠（とお）くの世界（せかい）、【言霊（ことだま）】もとい【漢字（かんじ）】について何処（どこ）までも追究（ついきゅう）していく、一人（ひとり）の女（おんな）教授（きょうじゅ）の物語（ものがたり）である。