失望
ヤビツと別れて、今度は村長のところへ向かうことにする。村の中央にある少し大きな建物が村長の家だったはずだ。そちらに向かうと、家の前には人だかりができていた。
手に手に器を持って並ぶ人々に、村長は小麦の大袋から
「ノアルー村長、もっと食料が必要ですね。なかなか手配ができなくて申し訳ありません」
村長は手を止めずにいった。
「あんたが約束を守ってくれたことには感謝しておるよ。冬を越せるかどうかギリギリの食い物しか残ってなかったからな。場合によっては、あの客人たちを襲うようなことになったかもしれん」
さらっと恐ろしいことを告げる村長の顔をまじまじと見るが、冗談をいっているようには見えなかった。たしかに、自分たちが餓死する危険がある状態なら、人語を解するとはいえ、黒鼻族たちを食料にするという考えが浮かんでも不思議ではない。人間を食べるよりはよほどマシだろう。
「そんな悲劇がおこらなくて、本当によかったです。作戦がはじまれば、こちらに食料をまわすこともできるようになると思いますが、かなり先、おそらく二ヶ月は先のことになりそうです。大丈夫でしょうか」
なにが大丈夫なのか。もちろん、私は黒鼻族を襲うことがないという保証を求めているのだ。
「二ヶ月だとギリギリだな。もう少し、なんとかならんのか」
村長には、村民を養う必要がある。農業ができないバウセン山の周辺では、
「私たちが東へ戻るときに、何人かついてきてもらえば、食料を早くお渡しできると思いますよ」
「だったら、そうしよう。だが、わしらは戦いには参加せんぞ」
ルビアレナ村の人々を戦争に巻き込むのは、こちらの本意ではないし、兵器製造拠点としての活躍を期待してるのが本当のところだ。
「もちろんです。こちらも、戦争に参加していただけるとは思っていませんよ。ところで、はなしは変わるのですが、お願いしていた武器の件はどうなっているか、おうかがいしてもよろしいですか」
村長は返事のかわりに、大声で怒鳴った。
「ベエカ、ベエカ! 客人に依頼の品の件を説明して差し上げろ」
行列から、手に陶器の鉢を持った男がこちらに向かう。私たちが、初めてこの村に来た時に案内してくれたベエカという男だった。
「村長、せっかく列に並んでいたのにひどいよ」
「グダグダいうな。そこに置いとけば、きっちり入れておいてやる」
ベエカは鉢を村長の横に起き、私たちについてくるよう促した。
村長の家の裏手には掘っ立て小屋のような作業場があり、ベエカは私たちを中に入るようにいう。
「あんたたちの依頼を受けてから、男手をあげて鍛えたんだぞ。感謝してほしいな」
食料の対価という意味であれば、当然と考えることもできるが、そこまで
「ありがとうございます。それで、お願いしたものはどれくらい用意できましたか」
小屋の奥に置かれている縦長の陶器から、ベエカは一本の刀身を引き抜いた。
「これが鬼角族が使う大太刀だ。合計二十本ある。すまんが、
思ったより大太刀の数が少ないことに失望するが、そのことが顔に出ないように気をつけた。
「わかりました。槍はどうですか。それに
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