矢羽
ユリアンカとジンベジを送り出し、すぐにフェイルの町から持ってきた品物を確認しにいく。
五張りの弓は半弓で、騎射するには長すぎるが、そこそこ威力はありそうだ。三角錐の形をした
族長の天幕に戻り、ハーラントに弓を使えるものがいるかどうかをたずねるが、誰も弓は使えないとのことだった。弓は卑怯者の武器というのが鬼角族の考えで、忌避されているのが原因だ。羊の放牧に出るハーラントに、今晩から敵との戦い方についての意見交換をすることを頼んだ。
ハーラントが出ていくと、自分の天幕に向かい、シルヴィオを呼んで、近くにある
「シルヴィオ君、この板で矢をつくるから手伝ってほしい。この
「こういう細かい作業は得意なんです、隊長。見ていてください」
シルヴィオは板に鉈の刃を立て、そのまま地面に軽く打ちつける。鉈の刃が板に少しだけ入ると、今度は強く鉈を地面に打ちつけると、板がきれいに二つに分かれた。今度は半分になった板の真ん中に鉈の刃を立て、地面に打ちつける。刃が入ると今度は強く――。私より、よほど器用に細い棒を作り出していく。
「なかなか器用だな。なにか経験があるのか」
「
それなら任せてよさそうだ。シルヴィオには棒をつくることを頼んで、天幕の外に出た。
ハーラントもユリアンカもいないので、ことばが通じる相手はいない。
ホエテテの妻であるウーリンデが、少しだけ人間のことばを覚えつつあるようだが、意思疎通できるレベルではなかった。しばらく野営地をウロウロして、目的のものを見つけた。ある天幕の入り口のところに、鳥の羽の飾りがあったのだ。これで
食事が終わり、族長のテントで矢をつくりながらハーラントと二人で作戦の確認をする。バター茶が用意されたが、
「この羊の膠はすごい粘着力だな。牛や豚のものより、格段にくっつく力が強い」
「そうだろう、そうだろう。キンネク族には、昔から腕の良い膠をつくる職人がいて、
上機嫌なハーラントは、バター茶を飲みながら私の手元を面白そうに眺めていた。
「その大市というのは、いったいなんなんだ。教えてくれるかな」
「年があけて二度目の満月の日に、我らの聖なる地で同胞が集まり、生きる上で必要なものを交換するのが大市だ」
生活必需品を交換する
「少し気になったんだが、キンネク族にとって一年はいつ始まるんだ」
「春になれば新年だ。あと四月ほどか」
私たちのいう四月が、一月ということになるのだろう。
「ところでローラン、その矢の後ろに羽をつけることには、なにか意味があるのか」
「これは矢羽といって、矢に回転を与えるんだ。矢を回転させると、真っすぐ飛ぶ。これがないと、どちらに飛んでいくかわからない」
ハーラントには、いまひとつ理解できていないようだったが、どちらにしろ弓を使う気がないのだから問題ないだろう。
「さて、それじゃあ攻めてくる軍隊への作戦についてはなしをしようか」
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