戦車
そもそも木剣で、火であぶって固くした槍を切ることができるのだろうか。木剣で切れたとしても、このような滑らかな切断面になるのだろうか。ユリアンカとは何度も木剣で戦っているが、これほどの技の冴えはみたことはなかった。
ある考えが私の頭をよぎる。
「ユリアンカさん、あまりやりすぎると槍がなくなってしまう。少しは手加減してやってほしいな」
震えそうになる声を抑えながら、何事もなかったように断ち切られた槍を放り捨てる。
「では、ツベヒは一班と二班で、ユリアンカさんに稽古をつけてもらってくれ。三班から五班は私と一緒に来てもらいたい」
そういい残し、兵士たちを引き連れ本部天幕から少し離れたところにある、馬をつないだ場所へ向かった。
「ここ数日、私が大工仕事をしていたのは見ていたと思う。じつは、前の戦いのときに解体した荷馬車の部品を使って
車輪の上に人間二人が横に並んで乗れる灰色をした籠のようなものが取り付けられ、その中央からは一本の木の棒が伸びていた。棒の先端には丁字に短い棒があった。
「教官殿、一つききたいことがあるんですがいいですか」
先ほどまでしょんぼりしていたジンベジが、何事もなかったように質問をしてくる。切り替えが早いのも才能の一つなのだろう。うなずいて、質問を続けさせる。
「なぜ、馬に乗らないんですか。
当然の疑問だろう。しかし、わざわざ
「理由は二つある。一つ目の理由は、鬼角族たちは馬に乗るのに鞍も
他の兵士から笑い声が漏れる。
「鬼角族は弓を使わない。私たちが鬼角族に勝てたのは、ひとえに投槍のような投擲兵器の力だった。
私がそこまでいうと、ジンベジが続けた。
「つまり、俺たちに残りの三台をつくれということですか」
にっこり笑って肯定する。
「さきほどコテンパンにやられたジンベジ君には、罰として特製の籠をつくってもらいたいと思う」
そういいながら、灰色の籠を指さす。
「この籠は、黒鼻族の住居と同じものでできている。軽くて、乾くと固くなる理想の材料だ」
本来は、木で作るべきなのだが、このチュナム集落周辺にはほとんど木がない。
「いまからヤビツといっしょに、黒鼻族の家から羊たちの糞を集めてきてくれ」
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