明日の君へ

戦の舞姫💕

第1話

一目見た時、私は、まだこの人を好きになるなんて思わなかった。

身長はそこそこあるけど、どこか抜けてそうな顔して、見るからにマイペースで、つまんなそう。おまけに仕事が遅いなんて、使えない。


この男、増山竜馬ますやま りょうま。年は私の方が上だけど、バイトに入ったのは増山くんの方が1ヶ月くらい早い。

それなのに毎日怒られて、正直呆れてしまうし、周りからはあの子と働きたくない。なんて悪口まで言われて。気づいたら、私も悪口言う側に入ってた。

まぁ、入ってたって言っても、先輩方の言ってることに共感してるふり…みたいな感じで。私からしたら、別になんとも思わなかったし、気にするだけ時間の無駄だと思っていいた。


「ねぇ、琴美ことみと、増山くんって、彼氏彼女とかいるの?」


不意に先輩からの質問だった。

私は、その時6歳上の彼氏に浮気されてて、彼氏なんて思いたくもなかったけど、まぁ。いますよ。って答えてみた。


「僕は、昨日彼女と別れました。」


増山くんは、大して辛そうな顔もせず答えた。原因は友達に取られたとか。


その日の帰りは、先輩と2人で増山くんの話で持ち切りだった。


「彼女と別れたから仕事遅いんじゃない?」


「だったら、彼女出来たら早くなるんじゃないですか?」


私は、冗談半分でそう答えた。


「え、それなら琴美、増山くんと付き合ってくれない?」


先輩は笑いながら言い出した。

突発的に嫌ですよ!あんな仕事遅いやつ!それに、私、彼氏いますし…。あ!じゃあ、先輩が付き合っちゃえばいいじゃないですか!


なんてくだらないやり取りをして、その日は23時を過ぎていた。

帰ると、私はいつも通り、彼に連絡をする。

その日の会話も、彼の職場の女の話や、よく行くキャバクラの女の話。


私は、どうリアクションしていいのかも分からず、へぇ。とか、ふーん。って言って流す。


___この人といつまで付き合う気なの?


そんな問いが、いつも私の心を突き刺す


けど、もし別れたら、誰が私を必要とするの?この人が居なかったら、私、生きる意味ないよ?形だけでもいいんだよ…。


そして、たった数十分の電話が終わる。

こんな会話だけのために通話料取られて、浮気されても追いかける自分が惨めで…。


ハサミを手にする。


心の痛みと傷を変える手首は、赤く染まる。私は、流れる血を眺めて


__このまま死ねば、楽になれるの?


って、私を苦しめる


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