天使と悪魔、神と…

ばじる

第1話 天使と…?

「右と…?」と尋ねると、多くの人は「左」と答える。

同様に、「上と…?」と尋ねると、「下」と返ってくる。

そして、「天使と…?」と聞くと、ほとんどの場合「悪魔」と返ってくる。


先に挙げた組み合わせ、「右と左」「上と下」などは「対義語」と呼ばれる。

「対義語」とは「意味の上で互いに反対の関係にある語」(広辞苑 第六版より)という意味であり、ようは「対の意味になる言葉の組み合わせ」ということだ。


さて、「右と左」「上と下」と同じ感覚で「天使」の対義語として我々は「悪魔」を用いる。ここまでは問題なく理解できる。「正義」と「悪」の構図だ。


では、「神」の「対義語」は何だろうか。


「神」はもちろん「正義」の側の存在である。


また、「神」は「天使」にとっての上司である。

では、対になるのは同様に「悪魔」にとっての上司だろうか。


「悪魔の上司」、悪魔の序列からすると「悪魔のトップ」は「悪魔 ルシファー」である。

しかし、「悪魔 ルシファー」は元々「天使」だ。

つまり、「ルシファー」は「神」から生み出されたものであると同時に、「神」の下に位置する存在である。


どうにも「ルシファー」に一人で「神」の相手をさせるのは無理な気がする。


ここで一旦考え方を変える。


というのも、今までの考察は「キリスト教」、つまり「唯一神教」をベースとして考えていたからだ。


「多神教」的に考えると、「天使」の位置にいるのは「善きもの」、「悪魔」の位置にいるのは「悪しきもの」だと考えられる。


そして「多神教」的考えにおいて最も重要なのが、「堕天使」のように悪の側につく「悪い神」。いわゆる「忌神」という存在である。


「唯一神教」では「神」は「唯一の存在」であり、また「善なるもの」であるとされる。

しかし「多神教」では、いろいろな考えを持つ「神」がおり、その中には「善い神」もいれば「悪い神」もいる。


つまり「多神教」においての「神」の「対義語」は「神」となり、またその「神と神」は「正義と悪」と同義になる。


「神」に対する見方を変えれば、「対義語」が現れたり、消えたりする。



「天使と悪魔」が話題に出たときにでもこの話を頭に巡らせてもらえたら幸いである。

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