悲運な少女
クリスタルカンパニー表向きは国内最大級の宝石商であり、貴族・VIPに多くの顧客を持ちここ数年で急成長した組織である。
しかし、このクリスタルカンパニーには裏の顔があった。
鉱山採掘には奴隷同然に雇われた孤児を使い、人権を無視した労働を課している。
そして、たとえ衰弱し働けなくなった者や死亡した場合でも其の者の臓器を売買しその資金で別の孤児を買い労働力にしていた。
なんとも悪趣味な半永久機関を作り出しタダ同然で労働力を手に入れていた。
急成長した背景には労働力とは別に「天使の涙」と言われる純度の高いクリスタルが大きな影響を及ぼした。
数が極少でありクリスタルカンパニーしか取り扱っていない為、庶民には到底手の届かない高値で取り引きされていたが希少価値とこの世の物とは思えない程の輝きに貴族・VIP・セレブらには飛ぶように売れた。
その「天使の涙」名前の通りある少女が流す涙により生成されていた。
少女は孤児院で育ち、のちに労働力としてクリスタルカンパニーに売られた。
少女は他の孤児とは違い辛い労働の毎日から必ず抜け出すことができると信じどんな辛いことが起きようとも気丈に振る舞っていた。
しかし、少女は夜収容所の硬い床の寝床でだけは周りの眠りを邪魔せぬよう静かに泣いている事があった。
ある日の夜、看守が夜の見回りを行なっている時、偶然手に持つ懐中電灯の光が少女の枕もとを照らした。
するとその光に呼応するかのように何かが一瞬であるが輝きを放った。
看守はその一瞬の輝きに目を奪わた。
吸い込まれるように鉄格子の鍵を開け少女の枕元に近寄り発光体を手に取った。
この看守も今は見回りなど雑務の仕事をしているが、以前はクリスタル製造に端くれではあるが携わっていたこともあり、手に取り一目見た瞬間にこの発光体がクリスタルであると判断できた。
しかし、看守はこんなにも美しいクリスタルを見た事がなかった。
人間は誰として欲はある。
看守の脳裏に自分のものにしたいという物欲が沸々と湧き上がる。
だが看守は今の仕事に満足していなかった。
このクリスタルを上に報告すればまたクリスタルに携わる仕事につけるかもしれない。
いや下手したら幹部にだって昇進する可能性だってある。そんな葛藤が一瞬にして頭の中を駆け回る。
そして、看守は手にクリスタルを握りしめ足早に上司の元へ急いだ。
この時看守の物欲が勝っていたのならこの悲運な少女の運命も変わっていたのかもしれない、、、
To be continued
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