魔女狩りの手には鎌ではなく1枚のチケットを

桜木 彩

序章

 大切なものは、常に側に置いておかないとだめなんだって。

 気が付いた時には手の届かない処に行ってしまうから。


 私にとっての大切なものって何だろう。


 考えたことも無かったけれど、もしかしたらもう…既に私の近くには存在しないのかもしれない。


『私の事を愛してくれますか?』


 いつからだったか、私は同じ夢を観る様になったんです。

 1本の櫻の樹を背に立つ少女が私に語りかける夢でした。

 私は、少女の問いには答える事なく、その場に立っていました。

 暫くそうしていると、少女は静かに微笑んでくれました。

 すると、櫻の幹から2本の腕が現れて、少女の身体を抱きしめて…そのまま幹の内へと沈んでいくのでした。

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