第86話 項籍・項羽と韓信! (55)

 そんな様子の韓信様を此方が凝視していると。韓信様が自害をしょうとしたのを自身の持つ奉天檄で阻止をした覇王妃様の口から、このような言葉が述べられる。


「……何故、自ら命を絶とうとするのだ? 今の現状は韓信、お主の隊の方が儂の隊に押されてはいるが。先程迄は儂の隊の方が押されていたのを忘れたのか? お主なら未だ隊を建て直せば、儂の隊を押し戻す事も可能だろうに?」


「えっ?」


「 "えっ?" ではないぞ韓信! 儂が先程もお主に述べたと思うが? これからの生涯が幸先不安ならば、劉邦から離別をして、儂の君、の下へと来ぬかぁ? 絶対に悪いようにはせぬ、儂の君は優しいから生涯可愛がってくれるし。本当に儂とは違って良い男なのだ……。それに待遇の方も儂と同等の身分扱いで良いから。儂の君に仕えて欲しい……」


 と、韓信様に述べたところで、慌てて愛馬 "騅" から降りて、その場で、座り込み正座を始め出した──。そして覇王妃様の艶やで妖艶な唇が開く──。


「韓信先生お願いします! どうか家のひとに力をお貸しください! お願いします!」


 覇王妃様は自身の頭を深々と下げ、韓信様に土下座をしながら言葉を述べ嘆願をしたのだ。


 それも一回限りではなく、何度も何度もね……。


 あの気位の高い一騎当千万夫不当の戦姫様がだよ。


 此方も傍から見ていて、呆然と言うか? 開いた口が塞がらないと、言った状態に陥りそうなぐらい驚嘆をしているぐらいだから。


 韓信自身も流石に、覇王妃様の様子に驚愕の表情で、自身の目を白黒としているよ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る