第32話 項羽と籍(1)

「やっ、やったぁあああっ! やったぁあああっ! 劉邦を追い詰めたぞ! 後は劉邦から蕭何しょうか韓信かんしん……。そして張子房ちょうしぼうを手に入れれば、漢の三傑が皆揃うぞ! 本当に有難う項羽! 全部覇王さまのおかげだよ! 俺余りに嬉しくて、今晩眠れないかも? みな君が頑張ってくれたおかげだよ、項羽──本当に愛しているよぉおおおっ!」


 まあ、何とも言い難いと言うか……。今こちらの目に映る彼は、大変に声を大にしながら歓喜を上げているようなのだが。


 う~ん、この行為が、大変に困ったと言うか? こんなことではいけないのではないかと、傍から見ていて思われるのだよ。


 だってこちらの目に映る少年籍は、今パソコンのモニター画面に向かい接吻を……。


 それも、何度も、何度もなのだよ。


 だから籍、お宅大丈夫? もしかして、気が触れてしまったのではないよね? と、こちらも訊ねたくなる。


 だ、だってさ、今こちらがね、凝視をしていて不安になった籍君はね。パソコンモニター画面の中にいる、自身の持つを空高くかざし、勝利の雄叫びを上げている。ヒロインキャラの一人である覇王項羽に向けて、何度も接吻をしているのだよ。


 それも愛していると囁きながらだよ。




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