第5話;赤の死神
(全てが何も間もが色あせてしまった気がする)
血のように真っ赤に染まった空を仰ぎ見てリリアナは思った、
累々と横たわる死体の山の中央に立つ、赤い髪の青と金の瞳の少女
彼女が倒れる寸前、赤い髪は一瞬のうちに白く色あせ、瞳の輝きが消えた
ジフと一緒に居ることが増え、お互いを意識し出したのはいつ頃からだろう
気が付くと手を繋ぎ、肩を寄り添っていた、
触れ合うことも多くなりお互いの夢も重なっていた
「お店何処に出そうか?やはり王都に行った方が良いかな」
二人で語る夢の話は楽しかった
そんな時隣国を席捲していたテロリスト集団が【聖クランデイール王国】に迫って来ている情報が入って来た
「これは・・・」
【 西の都 】ギルドに届いた王城からの命令書
「王城から全ギルドに命令が下った、ランクC以上の冒険者の戦場への招集だ」
ギルドは独立した組織だ、基本政府からの命令は有りえない、
「要塞都市がテロリストに占拠されたと、奪還のために王国兵士、騎士団、冒険者を招集するとの命令書だ」
「ギルド長!?・・・要塞都市ってジョアン?」
「ああ・・・」
「戦争なの?」
リリアナは14歳になっていた
<戦争>
修羅場を幾つも潜ってきたリリアナだったが、ピンと来ないでいた
「王都警備と前線に冒険者を出せと・・・くそっ俺らは戦争をするために冒険者になって無い!」
「断れないの?」
リリアナも独立した組織のはずの冒険者ギルドに「命令」は可笑しいと思った
「要塞都市ジョアンはギルド長の生まれた町なの」
そうルイズが言うと、それは関係ないとギルド長は言う
「過去世界大戦の時には招集されたらしい、命令ではなく依頼だったらしいが」
「今回は世界大戦並に広がる可能性があるからじゃない?」
そう横やり入れて来たのは情報屋の獣人のミミィ、
「要塞都市にはあれがあるじゃない」
「・・・・古代兵器アルゲドン・・・・一発で直径10キロを焼きつくし破壊できると言われる」
「あれは動かせないよ、魔力が大量に要って、優秀な魔導師が100人廃人になるレベルの兵器だぞ」
無理だと言うギルド長
「廃人にしてもかまわないと多分奴等は思っているわ、そう言う奴等だよ」
「古代兵器アルゲドンって始祖王の時代の遺跡だよね、魔力があれば使えるの?」
「始祖王は桁違いの魔力の持ち主で<魔力石(まりょくせき)>が3つあったそうだ今でも使用可能だ,
発射は出来なかったが、初期始動は出来たと聞く」
冒険者ギルドとしては、強制は受け入れないとして依頼として受けることを、主だったギルド長とSSランクの冒険者の総意として王政府に受け入れさせた
リリアナとジフも行くことになった、出発数日前
街のレストランに多く冒険者の姿があった
「リリィ、この戦闘が終わったら君の15歳の誕生日に結婚式をあげよう」
二人で端のテーブルに居たジフがリリアナの手を取り言った
「うん、よろしくお願いします」
赤くなり涙を浮かべるリリアナ
そこへバニッシュギルド長がやっきた
「リリアナ、ジルと結婚するのか?よし!父親役は俺に任せておけ」
二人の背中をバシバシ叩くバニッシュギルド長
「「痛い・・」」
「ギルド長のタキシード姿想像できない~」
ルイズも二人の所に来て二人を祝福する
「おい!ルイズ!そんなもん着るわけないだろう?俺の正装は筋肉だ!」
「「えぇ~やだ~」」
周りが笑に包まれた、幸せな空間だった
その夜リリアナとジフは二人同じベットで夜を過ごした
二人の関係が深くなったことを周りの冒険者たちは一目で分かった
そして幸せそうな二人、皆、二人を守ろうと決意していた
要塞都市ジョアンは跡形もなく燃え落ちていた
2万人いた住民はその4割が逃げ遅れ死亡した
弱弱しい足取りで逃げる住人の横を冒険者と王国軍と騎士隊がすれ違い進軍している
「かける言葉もないなお互い」
そう言うバニッシュ
リリアナはぎゅっと唇を噛んだ
絶望の住人と、死地に向かう兵士
「守りたい、皆を」
「そうだな」
がしがしと頭をなでてくるバニッシュ
リリアナは体の小ささと隠密の優秀さで砦の内部工作班になった
内部班は障壁の解除と古代兵器アルゲドンの無力化が任務、
とても危険だが隠密の魔法を自分以外にも施せるのはリリアナだけだったので
バニッシュの抵抗むなしく軍部に押し切られた
「大丈夫、私が皆を守る」
そう意気込むリリアナ、がしかし心臓はバクバクだった
今までと違う敵の人数が違う脅威の桁が違う
ひしひしと感じるリリアナだった
テロリストとはいえ軍隊と同じ形態を持ち、人数も1000人は超えていた
【聖クランデイール王国】側は軍隊1200人(内100人は輸送隊)騎士隊300人冒険者120人
内部工作員
軍隊から10名、アルゲドンの無力化が任務
騎士隊から10名、障壁の解除任務
冒険者から6名、護衛、かく乱、隠密魔法要員
女性はリリアナ含め3名,魔法が得意な冒険者達
軍隊は砦向かって扇情に展開
古代兵器を使われても全滅を防ぐ為だ
各小隊には優秀な障壁を張る魔法使いが配置はされているが
古代兵器の威力が分らないため皆、緊張していた
リリアナ達は隠密、光学迷彩、魔力感知遮断などを使い砦に侵入していった
外では戦闘が始まっていた
古代兵器アルゲドンの軌道システムは屋上付近にある。
「何か嫌な感じ」
そんな気配の中、上へと進んでいった。
大きなフロアに出た
何人もの魔導師らしき人間が倒れている
生気が感じられない、殆どの人間が死んでいた。
「酷い」
「ん?だれか居るのかい?」
起動システムの石板の前に妖艶な女性が立っていた
「死を呼ぶ魔女フランチェスカ!」
「あらっ私のこと知ってるやつがまだ居たなんて、あなた見た目の年じゃないわね」
冒険者の魔導師の女性が死を呼ぶ魔女フランチェスカに向かって言った.
「私はエルフだ、忘れもしないぞ!その顔!人族の癖に1000年も生きている化け物!」
「いや、死んでるね・・・」
そう言ったのはリリアナ
「!ふふはははっ、そうさね私はアンデットだよ、高位種だから普通の人間は気がつかないがね、小娘!おぬし何者だ!」
「普通の冒険者だよ!そこから離れなさいよ!」
「もう遅いね、ほら動き出したよ」
ゴゴゴゴゴッドーン!!!!
と音がすると閃光が走った
「やめ!」
そう叫んだが遅かった
外からすさまじい爆発音がする
「うそっ・・・やだ!嘘でしょう・・・」
「リリアナちゃん!?」
フロアから外が見える窓は無い、がリリアナは見えていた
真っ赤になった地面を、消えていなくなった仲間とそして愛しい人たちの事を
「1/3の力でこれは凄いわね」
「1/3?」
「見てよ子の張りの有る肌、若い魔導師の魔力って本当に美味しいわ~貴方のもちょうだい」
妖艶な顔が歪む
『ピキンッ』
「?何の音?」
長寿のエルフがリリアナの方から聞こえた変な音に戸惑った
「さぁ私の糧となりなさい! うぐっ!・・・何・・・」
魔女フランチェスカの胸にリリアナの腕が埋まっている
「なっ障壁張って居たのに・・・ぐはっ!」
口からどす黒い血を吐く
リリアナは古代兵器アルゲドンの起動システムの石板の前に手をかざす、
「我が命に従いてその力を行使せよ、グッデバルデハーン」
「・・・なんなのそれ・・・魔力が・・・やめて!消えちゃう私が消えちゃう」
魔力を魔女から奪って起動システムの石板に注ぐ、しかし先ほどとは様子が異なり、目の前に透明なスクリーンが浮かび上がった
「敵認識、各個撃破」
そう言うとまた
ゴゴゴゴゴッドーン!!!!と音がした
天空に上がったそれは先ほどより大きな閃光となり戦場に降り注ぐ
「ひるむな!敵も巻き添え食って減ってる、あれは再度撃ってこれ・ないんじゃないのか!?」
生き残っていた者たちの戦いは一瞬、膠着していたが再度戦いは始まっていた。
先ほどは大きな熱の塊だった物が、今度は天空で細かい光となって降り注いでいた。
「うわっ」
「おい!何だこれは!」
「目の前の敵が消し炭に」
そう、敵のみを消し去っていたのだった。
「やめて、魔力を奪わな・い・・・」
魔女から手を抜いて、床に転がす
そこにはミイラ状態の死体が転がっていた。
「リリアナちゃん?」
「まだいる・・敵!殲滅!」
「!どうしたのよ!リリアナちゃん!・・・・リリアナちゃん!」
移転で消えるリリアナ
「あいつの目可笑しかったぞ、俺たちのこと見えてないみたいだった・・・」
「聞いたこと有るわ、我を忘れて盗賊を討伐した話、一緒に行った冒険者の友人が恐ろしくもあり、頼もしかったって」
「とにかく他の連中と合流しよう」
そう言って古代兵器アルゲドン対応部隊は砦の下層に下りていった。
障壁部隊と合流した所で場外で戦っていて生き残った者たちも砦を越えた、
そこで目にした光景に全員呆然とした。
累々と横たわる敵の死体の山!
その向こうに、剣を振るうリリアナの姿が見えた、敵は何かに取り付かれたように、リリアナに群がっていた。
「なっ!どういうことだ」
生き残りの中で一番地位の高い、副部隊長がその光景に驚愕する。
「まるで敵が飢えた魔物のようです!」
「リリアナちゃん!額から血が!怪我してるわ~治癒魔法得意なはずなのに・・・」
「魔力切れか・・・やばくないか!?まだあの人数だぞ!」
「加勢に行くぞ!皆続け」
「うわっぷ」
「なんだ?」
「障壁です!強力な」
『皆は私が守る』
言葉では無い何かがそう伝えて来た。
「?リリアナちゃん・・・まさかこの障壁リリアナちゃんが・・・」
「俺らを守るため?・・・魔力切れの原因はそれか!くそっ!」
襲い掛かる敵、それをなぎ倒すリリアナ、
それを傍観するしかない兵士と冒険者達。
女性冒険者達の中には涙を流す者も現れた。
「もうやめて・・・服もぼろぼろ、血があんなに流れて、死んじゃう・・・」
「くそっっ」
その状態が1時間は経っただろうか、リリアナの周りで動く者が居なくなった。
(全てが何も間もが色あせてしまった気がする)
血のように真っ赤に染まった夕焼けの空を仰ぎ見てリリアナは思った、
累々と横たわる死体の山の中央に立つ、赤い髪の青と金の瞳の少女
彼女が倒れる寸前、赤い髪は一瞬のうちに白く色あせ、瞳の輝きが消えた。
障壁が消え、皆が一斉にリリアナの元に駆けつける。
頭から血を流し、顔も腫れ上がり、どう見ても骨が折れている手足、肋骨も折れているようだった。
「どうしてこの状態であんなに戦えるんだ・・・」
兵士たちが驚愕していた。
「どうしましょう・・・・」
「どうした!?早く治癒魔法を」
治癒師がヒールを掛けているが一向に反応が無い。
「掛けているのです、拒否されるんです、治癒できません」
「拒否?つまりは」
「生きることを辞めているということか」
ますます泣き出す女性冒険者
その嘆きに,そこに居る少ない生き残りの兵士たちは,辛そうな顔を皆していた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
リリアナは獣馬を走らせる
「体が熱い、何かが放出されているような、でもコントロールが出来ない、何なのよこれ・・・」
空が明るくなって来た、月明かりで見ていた新たに出来た石、それが朝日ではっきりと青く輝いているのが見えた、その周りにも金色の蔦のような模様が浮き出ている。
遠くに煙が見える商隊の野営の煙だろうと思い近づく、
「なんで・・・」
そう、総勢50人は居る、護衛と商家の者たちがこちらを向いてひれ伏しているのだ。
煙のほうから朝食の準備中だったのだろう、いい匂いがしてきていた。
鍋は火から下ろされて、皿に入れたばかりのスープが湯気を上げていた。
その横で、全員がひれ伏しているのだ。
獣馬から下りて、皆に近づく、一番手前に居たのが、王都ギルド長のダンだ
「ダンまで・・・どうして皆そんな格好するのよ!私の顔をそんなに見たくないの!?」
ダンの手に暖かい雫が落ちてきた、リリアナの涙だった・・・・
(違うリリアナ!王の威圧を解け!・・・くそ!なんて威圧だ・・体が全く動かせない!)
ダン心の叫びはリリアナに届かない、他の者は考えることも抑えられていた、ダンだから、体のみだったのだが・・・リリアナの悲壮感は違う方向に行ってしまう。
「そうだね、こんな化け物の顔見たくないよね・・・こんな今になって新たな石が生成されるなんて、化け物だよね、4つ目の石なんて聴いたことないもんね・・・」
(!よ・四つ目!?・・・)
「私が居ると皆が可笑しくなっちゃう・・・居ないほうが良いんだ・・・やはり私は居てはいけない存在なんだね・・・・」
(違う!違う!リリアナ!お前は王なんだ!)
気配が全てを現す、ダンは近づく王の気配にそれがリリアナの物であることにいち早く気がついた、鍋を早々に火から下ろさせたのもダンだった。
「でも、ごめんね・・・自分で死ねないんだ私・・・ごめん・・・力がありすぎて死ねない・・・」
(違う!リリアナ!早まるな!)
心の中で叫ぶがリリアナには届かない。
「ごめん、私消えるねみんなの前から、探さないでね、そして私がこの場から居なくなったら、10分ほどで皆、何時もどうりにしてね・・・さような・・・ら・・・」
リリアナは獣馬に乗ると魔物巣くう森に向かって駆けていった。
リリアナが居なくなってしばらくすると、皆動けるようになった。
「ギルドマスター・・・彼女は!?」
最初に話しかけてきたのは商隊のトップだった。
「すさまじい王気だった!」
「やはり王気ですよね、凄い先の王の王気とは比べ物にならない・・・」
「探すなと命令されたら探せないじゃ無いか!くそっ」
「あの王気に逆らえる者が居るのでしょうか?」
「王配、王の配偶者と『王敬印(おうけいいん)』の持ち主ならもしかしたら、居るかどうかは解らないが・・・」
「私はここでしばらく誰か来ないか待ちます、皆さんはそのまま進んで、町に着いたらこのことを領主とギルドに報告お願いします。」
「ダン殿、残ってどうされる?探せないのに」
「カンです、何か待つべきだと思うのです。」
「・・・そうですか?貴方のカンに幾度と無く助けられてますからね、解りました。食料は何日分おいていきますか?」
「3日分お願いします、3日経って何も起こらなければ王都に戻ります」
「解りました」
そう言ってダンギルドマスターをおいて、商隊は目的地に向かって動き出した。
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