44 二十六日目の1 フェリー2
デス・ランを終えてフェリーに乗り込んだら、雑魚寝のスペースにすぐに寝床を確保して眠りに落ちた。屋久島までは四時間。その時間丸々、オレたちは眠り続けた。
着岸のアナウンスで眼を覚まし、屋久島に上陸した。
時刻は十二時半。まだ疲れが残っているオレたちは、朝飯兼昼食を摂るために島を回り始めた。
少し走ると、トタン屋根の小料理屋を見付けた。
夫婦二人で営んでいる店で、料理を頼むと「どこの人」と聞かれた。大阪から旅をしてます、と答えると、この辺りは宿泊施設も少ないし、ここに泊まっていけばいいと言う。
出会った日に世話になるのはな、とオレは遠慮するつもりやった。
「ええんすか? ありがとうございます」と鉄朗が了承した。
晩飯もここで食べたらいい、それまでに風呂行っておいで、と次の交渉が始まって、鉄朗がまた「ええですね」と言うと、原付では移動に不便だろうと軽トラを出してくれることになった。
それからとんとん拍子に話が進み、昼食後、長い食休みを取ったあと、オレたちはトラックの荷台に揺られて屋久島の無料天然温泉に出向いていた。
「晩ご飯前に向えに来るから」と店主が去って行く。
露天風呂は海に面した岩場にあって、海を見ながら入浴が出来た。
午後の日射しを受けて、大きな入道雲が僅かに色を付けてたゆたっている。
「屋久杉は何時から見に行く?」とオレは鉄朗に相談した。
「朝一に決まってるやん」
「え? なんで?」
「縄文杉を見に行くルートの登山口にバスが出てるんやけど、それ朝一にしか出てないねん。そもそも縄文杉まで何時間も掛かるしな」
「そんな遠いん?」
「めっちゃ遠い」
「まあ、何とかなるか」
何とかなるにはなったが、去年からの旅を合わせても、この登山はオレにとって「三番目」に辛い出来事になった。
二番目はデス・ラン。一番目は、まだ先のことだ。
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