40 二十四日目の2 黒豹VS総長
山口に入って二時間走り、今日の宿泊地道の駅阿武町に着いた。
海沿いにあるその道の駅は人通りも少なく、車中泊の旅行者が一箇所に集まっていた。
オレたちもそこに寄って当たり障りの無い会話をしていると、その中のおっちゃんが牛肉をくれた。挨拶をほどほどに、海岸沿いに降りていってそこにテントを建て、道の駅で買ったアスパラやベーコンで簡単な炒め料理を作り、米を炊いて食べ始めた。
地面に座って鉄朗と向かい合わせに飯を食ってると、また旅が始まったな、と思う。背中越しに波音と虫の声がしている。時折駐車場の方でさっきの旅行者たちの笑い声もする。
「元気やのう」と鉄朗が言ったとき、誰かが近づいて来た。
「どうも」
やってきたのは大学生やった。
話を聞くと、バイク屋の息子で改造バイクに乗って日本を一周している最中らしい。九州の南端からここまでたった一日で来たと言うので、一体何ccですか? と訊ねると、「排気量にね、上限は無いんだよ」と笑った。
「でも速度制限ありますやん」とオレ。
「大丈夫だよ。追い付けないから」
やべぇのが来たな、とオレと鉄朗は目を合わした。
「だけど、君ら関西から来たんやったら、アレ知ってる?」
「アレ?」と鉄朗が聞いた。
「黒豹。白バイの上位互換みたいなの。あれは疾いね」
ああ、もう完全にそっちの人なんやろうな、と思っていると、
「兄さん、暴走族っすか?」
鉄朗がストレートに質問した。こっちのやべぇのも負けとらんな、と思った。
「うん。チームの頭やってるよ」
予想を飛び越えてまさかの総長。こら貴重な出会いやなぁと妙に感心した。
「だけど、アレだねぇ。やっぱりちょっと関西弁は怖いね」
「あんたが言うか!?」
オレと鉄朗が声を合わせてツッコムと、兄さんは「怖い怖い」と言って笑った。
少しの間、漫画やら学校の話を談笑して、一日が終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます