34新学期になって

 春休みはネットゲームに没頭していたら瞬く間に過ぎて、新学期になった。


 オレは眠い目を擦って新学期の諸々の行事を終え、新しい教室にやってきた。

 出席順に席に座る。窓際の最後尾が指定席だったので、新年度早々運が良いと思っていたが、担任がやってきて「じゃあ席替えするか」と言ってクソったれと思った。


 席替えの結果、教卓の真正面に移動することになって項垂れた。

 せめてもの救いだったのは後ろの席に一年から友人の男が来たことだ。

 休み時間にはその男と五目並べをしたりして日々を過ごした。


「そういやさぁ、鉄朗のヤツ転校したんやで」と男が言った。

「知っとるよ」とオレ。

「え? まじで?」

「五連揃った」


 オレはノートにボールペンで書いた升目の上に、えんぴつで丸を付け、五目を揃えて言った。


「クソ、負けた。どこに転校したんやアイツ」

「兵庫の浜の方やな」

「ふぅん。元気しとんかな」

「どやろな」


 連絡先は知っとったが、転校以来やりとりは無かった。

 小中の卒業で別れた友人たち同様、若い時の別れはそんなもんやろうが、それでも時々あの旅を思い出した。

 その都度、オレは屋久島を上空から見た地図を頭に思い描いた。

 一体どんな島なんやろう。縄文杉はどんな感じなんやろう。


 好き嫌いじゃなく、小さい後悔から、週に一度は考えてしまう。


 しかし、五月になる前、帰宅部やったオレを後ろの席の友人が軽音楽部に誘ってキーボードを担当することになり、日々が忙しくなると次第に旅のことも頭の隅に追いやられていった。


 ところが、六月のある休日の朝、


「爺ちゃん、容態悪なったって」


 おとんが険しい顔で言った。

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