30 十九日目 逗留の5

 バイク屋から連絡があったのは昼過ぎやった。

 聞けば、部品は見付かったが届くのにもう三日は掛かるという。

 既に逗留も五日目。オレたちは半分を過ぎたあたりで旅を諦めざるを得んくなった。


 もう八月も二十四日。これから三日待てば新学期には間に合わん。

 残念やけどしゃあない、と鉄朗は言った。


「まさかこんな結果とはなぁ」


 オレは居間の畳の上に寝転がりながら呟いた。

 とりあえずのゴールとして決めた屋久島の縄文杉やったが、行けなくなると分かると妙に惜しい気がした。


 しかし旅行が取り止めになって駄々をこねるような年齢でもあるまいし、残りの夏をどうするか考えることにした。


「鉄朗、お前どうする」

「ジッとしててもしゃあないし。儂は先に大阪バイクで戻るわ。野武彦は?」

「バイクの受け取りもあるし。一人で田舎居ろうかな」

「それから戻ったら新学期ギリギリになるんちゃうか」

「バイクはトラックかなんかで送って貰って、電車で帰るわ」

「なるほど。ほな儂もそうしょうかな。家帰っても特になんもないし」

「ほんじゃあそのへんの手続きはあとでやっとくわ」

「じゃあ、これからどないする?」

「バイク受け取ったら、爺ちゃんとこ見舞い行って、そんとき用の日誌作るわ」

「日誌?」

「旅のな」

「せやったらええやつにした方がえんちゃうか。買いもん行くか」

「了解」


 この日は、無地のノートと筆記用具、これまで撮った写真の現像をして、ノートの構成を考えるので一日が終わった。

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