28 十七日目 逗留の3
夕暮れの前に家を出て、オレたちは夏祭りに向かった。
花火はこれといって変わったことはなく、赤黄緑の閃光の大輪が轟音と共に咲く。露店の焼きそばを食べようとしたら、鉄朗が「焼きそばは微妙」と言ってスルーした。それじゃあ何にしようかと歩いとったら、
「うわっ! ジャガバターあるやん! やるねぇ」と鉄朗が興奮して言うた。
「北海道で食ったやん」
「どっちがやるか比べてみよや」
二つ買って食べ始める。
「うーん。やらないねぇ」
試される大地圧勝。
花火を見ながら川沿いに近寄って行くと、人集りが見えてなんやろうと思ったら、精霊流しがやっとった。誰でも参加出来るっちゅうんで、オレたちも輪の中に入る。
黒い川の上に、火を灯した四角い箱が流れていく。盆提灯が通過するところだけ、川の流体の動きがよく見えた。近くに居たカップルや家族連れが「綺麗だねぇ」と口々に言うなか、そういうときにオレたちは皮肉を押えられん質やった。
「あの大量の提灯、誰がどんな気持ちで掃除すんのやろな」
「愚かな人間どもめ。新車でパンクするがよい」
「まぁ、オレたちも流したんやけどな」
「愚かな儂たちめ」
花火が終わるころに合わせて戻ると人混みに巻き込まれる、と鉄朗が言うので、クライマックスが来るまえにオレたちは家路を辿った。
帰り道からでも、花火はよく見えた。
人間ならまだしも、あたりの森や山に棲む動物たちは、あの爆音と光をどう思ってるんやろうな、とそんなことを思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます