邂逅

正門の広場の前で黒いフードをかぶった原初の魔獣がスティンガーに話しかけた。


「貴様がレジスタンスのリーダーか」

「そういうあんたは原初の魔獣さんかな。珍しいじゃないか人前に出てくるなんて」


軽々しく互いに挨拶をするが少しでも言葉を誤れば殺されるとスティンガーは悟っていた。


「お前らがラハムのやつからグングニルを奪ったと聞いてな。大人しく渡せば逃してやらんこともない」

「はっ誰がおまえらなんぞに」

「答えぬなら一人ずつ殺して行こうか」


黒いフードを取り、顔が露わになる。

ぱっと見普通の人間だ。

しかし、頭の左右には二本のツノが生えている。

遠くから見ていたカイムには姿形は違えど、あのツノには見覚えがあった。


「おいおい、あれまさかクサリクっスか?」

「クサリク?」

「あの魔獣の名前っスよ。まあ推測でしかないっスけど」


するとカイムは咄嗟にロロナの頭を押さえつけ、外から見えないように隠れた。


「ちょっ!?いきなり何すんの!?」

「いや、今なんかやばい気がして」

「何その理由!?」


実際、正門の広場にいるクサリクはカイム達が覗いていた窓の方を見ていた。

少しでもカイムの行動が遅ければ見つかっていたかもしれない。


「もうちょっと近づこう」

「わかったわ」


二人は城内の警備を掻い潜り、正門の真上の階まで来た。


「スティンガー達は大丈夫っスか?」

「ちょっと待って」


カイムとロロナが窓から覗き見る。

すると牢から脱獄する際にロロナと一緒にいた男がクサリクの前に座らされていた。


「さて、早く答えねば全滅だぞ。人間」


クサリクの手元に剣が現れた。

カイムには見覚えのある剣。

見間違える筈もない。

救済の剣エクスカリバーをクサリクが持っていた。


「まさか、あれ神器!?」

「エクスカリバー!」


カイムが探していた神器がこうも早く見つかるとは思っておらず、嬉しい誤算だ。

しかし、原初の魔獣が人型になっているということに妙な違和感をカイムは感じている。

そんな中ロロナが居ても立っても居られないといった様子で広場に向かおうとしていた。

それを察したカイムはロロナの腕を掴む。


「離して!」

「ちょっ今出ていくきっスか!」

「これ以上仲間を失うのは嫌なのよ!」

「おい!」


カイムの制止を振り切ってロロナは窓から飛び降りる。

ロロナは空中でグングニルを出し、クサリクの前に立つ。


「自分から出てくるとはいい覚悟じゃないか人間」

「ここで討たせてもらうわ!原初の魔獣!」


カイムはロロナが飛び降りた窓から顔を出し、大きくため息をついた。

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