15 沙衛門、番号を病的に渇望する
ルビノワの話が始まる。
「皆さんこんばんは、ルビノワです。
今日の主殿は少しへこむ事があった様ですが、こちらでリンクさせて頂いている方々の掲示板やコンテンツを眺めている内に調子が戻ったようです。皆さんのおかげですね」
「こんばんは、朧ですよう☆
でも、戻った調子で書き上げたのは鬼畜死霊小説なんですよねえ」
「こんばんは、沙衛門だ。
朧殿、主殿は先にけだもの根性の毒を吐き出してからでないと、前に進む事も出来ぬのよ。その気持ち、分からぬでもないが、まだまだ俺も主殿も修行の身という事よな」
「こんばんは、るいですよ。
まあ、主殿の場合、ストレスを溜めこむタイプですから、皆さんのページを見て回って楽しんだり、小説を書く事で感情をぶちまける事が可能になったのでしょう? 以前よりはずっとマシではないでしょうか」
「そういう考え方もありますねえ」
「まあ、リラックスして頂く事が何よりです。ストレスなんかで突然コロっと逝かれたら皆も嫌でしょう?」
るいが頬に手をあて、ほう、といつもの妖艶な吐息を漏らしてから、告げた。
「珍しく泣くかも」
「死んだりしたら犯してやる。泣きながら」
頬杖をついて憂鬱そうにサラッと何か言う沙衛門。
「猟奇的な犯行ですねえ。まあ、私も間違いなく泣きますよう」
「俺などが
『埋葬などさせるものか……!』
とか言ってちょっぴりすねて見せたりな」
「嫌な展開ですね、沙衛門様」
「そうね☆
それと、私もわんわん泣きます」
ルビノワが同意すると、朧が深刻そうな表情で告げた。
「ルビノワさんだから、グレたりしそう」
「今から!?
『ルビノワさんだから』
って何よ!?」
「あ、
『ルビノワさんだけに』
と言うべきだったかもですねえ☆」
「もっと印象が悪くなってる!?」
まあまあ、と沙衛門が手をかざし、言った。
「その時は皆でグレればいいさ。トイレを壊したり直したり」
「その時は私も長いスカートを履かせて頂きます。自慢の大鎌に鎖をつけて振り回したり」
「でもるいさんの場合、今とやる事が変わらなそうですねえ。沙衛門さんと相変わらず仲良しでいそうな気がします」
るいが少し不満げな表情で言った。
「私でも、やる時はやるんですよ?
そうですね……ではツープラトンで教室の障子を破いては貼り、破いては貼り」
「どんな不良ですか。るいさん、学校には障子張りの教室なんてありませんよ?」
「そうなんですか? サーヴィスがなっていませんね。くすん」
「学校は奉仕機関ではないんですが……」
「む、るいよ、何やらその言い方カッコイイな。
えーと、さ、サーヴィス、でいいのか? 意味は『奉仕』か……」
「その調子ですよ、沙衛門様☆」
「サーヴィス、サーヴィス☆」
「私も混ぜて下さい……」
楽しげな三人にルビノワが珍しく媚びる様に言った。
「では、お知らせです。
『闇の幽冥牢小説の魔』の『坩堝』の『餐 弐』をアップしました。食事の後に読まれた方がよろしいかも知れません。エグいです」
「どんどんグロい展開になっていきますねえ。ホラーですからその方がいいんでしょうけれどお、嫌展開もヒートアップしてましてえ、う~ん……」
「読ませてもらったが、何というか、ひどい。何あれ。
いやはや、主殿が暗黒小説の綴り手だとは夢にも思わなんだ。なうなめんずかと思いきや、主殿は心の闇が真っ暗なのだな」
「困ったもんですねえ☆」
「朧は少し明るそうね」
「最近、照明設備をつけましたから」
「じゃあ闇じゃないじゃないの」
「朧殿、俺にも分けてもらえないか、その灯火」
「ほ、本気だ……」
ルビノワの疲弊度が上がった。
ル「また、「リンクロワイアル」に個人サイト様を一件追加しました。よろしくお願い致します」
「主殿、俺にも出席番号をくれ。ぎぶみー」
「まずはHPを開かないと駄目ですね、沙衛門様」
「ご主人様にも出来るんですから、後は楽しんで作ればいいんですよう☆」
「そそ。レッツトライですよ、沙衛門さん」
「いや、番号で呼ばれたいのだ。そういう『ぷれい』なのだろう? ルビノワ殿」
「いえ、違います」
「うう、この際ルビノワ殿でも構わぬ。俺を番号で呼んでくれ~……」
「……このメンバーをどうまとめろと言うのか……」
ルビノワがしみじみと呟いた。
「沙衛門さんてば、いい演技ですよう! 生きた怪奇現象みたいですねえ☆」
「まあ、朧さんたらご冗談を☆ ほほほ」
「よく考えたらツッコミがあたし一人じゃないの……今日はあなた達が羨ましいわ」
「沙衛門さんがですかあ?」
「何故そうなる」
「何でもいい、早く番号を。
この際だから、何から何まで全て番号制にしてしまえばいいのだ。番号……うう」
「沙衛門様、その苦しみ方、素敵です……」
再びほう、とるいが吐息を漏らす。
「マニアックなんですねえ、沙衛門さん☆」
「……今日のお知らせは以上です。何か私は疲れて来ました。助けて主殿。
えーと、ではごきげんよう!」
「皆の衆、ばいばーい」
「またお会いしましょう」
テーブルに突っ伏しながら、沙衛門がやる気なさげに、るいが笑顔で手をひらひらさせた。
コーナー終了後。朧が笑顔でルビノワの袖を引く。
「ルビノワさん、こちょこちょしますかあ? 『大人のこちょこちょ』を」
「要りません。あなたのセクハラではもう癒されないんだ、私は」
ルビノワが何か言ってしまったが、それが引き金となったのか、朧の表情が引き締まった。
「あらまあ……分かりました。スキルを磨いて来ます。
見ていて下さいね、ルビノワさん☆」
にぎにぎと拳を固める朧の碧眼はやる気に輝いていたが、ルビノワは怖いので見なかった。
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