第4章 ターニングポイント
第61話 1週間後
まだ暑さの残る道のりを、自転車で通る。
なるべく、自分の身体に風を取り込むように、ペダルを強く踏みしめスピードを上げる。
二学期。
あんなにも長いと感じていた夏休みは、あっという間に終わってしまった。
夏休みだから、海に行こう!とか、リュウのやつが言い出すのかな、って予想してたけど、意外にもそんな発言は無く、僕の家や藤田くんの家で、だらだらとゲームをしたり、たまには街へ繰り出して、ショッピングモールでラノベを買ったり、それを読んで批評したりして過ごした。
夏休みが終わってから、僕は無意識に、マンガとかアニメでよく見かける、海で遊ぶシーンに憧れてたんだと気付いた。リュウに期待していたみたいだ。断じて認めたくはないけど。
来年こそは。
片岡さんとも何度か会った。話題のスイーツ屋さんに行ったり、その日の夕方は、いつもの丘に寄って話をしたり。
せっかく付き合ってるんだから、もっと海とか、遠出したかったな、と少しだけ悔やまれた。
いや、別に片岡の水着姿が見たいとか、そういうイヤらしい考えはない、絶対ない。絶対ないから。
あのお店で藤田くんに会った時は驚いたな。女の子の友達と一緒で、楽しそうで何よりだ。僕らと遊ぶ時間が減るのは、残念だけど。
そういえば、片岡さんも驚いてたな。無理もないか。ずっと『くん』付けしてたから、彼女が女の子だったって思い込んでたはず。
あの日の帰り道は、なんとなく気まずかった。
騙すつもりは無かったけど、結果的にそういうことになったし、今度きちんと謝らないと。
一方で、1週間後は僕の誕生日。藤田くんのことでわだかまりが出来なきゃ良いけど。
それ以前に、僕の誕生日を覚えているかどうかが心配だ。あの子、意外と忘れっぽいから。
そんなことを呑気に考えながら、およそ1ヶ月ぶりの通学路を自転車で進む。
1週間後は、僕にとっても、彼女にとっても、大きなイベントになるだろう。
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