第37話 鳥肌

日が完全に沈みそうになってきたので、僕とリュウは藤田くんの家をあとにした。


リュウのバカがさっきあんなことを言ってから、1時間くらいはレーシング系のゲームで遊んでいたが、なんとなく気まずい時間が続いていたし、僕も藤田くんもほとんど喋らなかった。金髪をした、ことの発端はよく喋っていたけど。


あれから、僕たちを見送るまで、藤田くんは僕と目を合わせてくれなかった。

避けられたかな…。


夕闇の仄かに明るい道を2人で歩く。

このバカは、僕がこんなに苦しんでいることを分かっているのか。


リュウが話しかける。


「サトシ」


妙にあらたまった顔で僕の名前を呼ぶ。僕は仏頂面で「なに?」と答える。


さすがに謝るかな、と思ったが、それは全くの見当違いだった。


しかし、次に発した言葉が、僕の気を引いた。


「サトちゃん、『チカラ』持ってる。しかも、結構ヤベエやつ」


いきなり何を言い出すやら。しかし、ふざけて言っているようではなかったことが、リュウの真剣な表情から分かった。


「どんな『チカラ』だよ?」


気になる。


「それが…」



その『チカラ』のおぞましさに、鳥肌が立った。

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