第6話 女子という生き物

片岡さんがおばちゃんの代わりに店番をする日は、普段19時に閉めるお店を18時に閉めるそうだ。彼女は僕と公園に向かいながら、先ほどのカミングアウト(正確には僕が当てただけなんだが)について詳しく話してくれた。

彼女は中学二年生の女子で、同じクラスの男子から告白されたようだ。

時間は昨日の放課後で、結論から言うと、彼女は保留したみたいだ。

さらに、試しに遊んで下さい、と言われデートに誘われたみたいだ。日程は、驚くことに、今週の日曜日。今日が金曜日だから2日後。もうすぐだ。

彼も思い切ったな。彼女はその日の夕方ごろ、帰りがけに「付き合えない」と言うつもりらしい。

公園に着き、このまえ彼女に殴られたベンチに座って、話を続けた。

「そいつ、女子ともまともに話せないくせに、遠くから私のことチラチラ見てきてホントに気色悪い。面と向かって告ってきたのは認めてやるけど、その時告った体育館裏で、友達らしきやつらが影に隠れてるの見えたからな。ホント、クソださい」

「ああ、そうなんだ…」

彼女の容赦のない非難にドキッとする。僕も、女子と接するのに自信がないタイプの人間だから、まるで自分のことを言われたみたいでショックだった。そこまで言わなくてもいいのに、と思う。

そんな僕の動揺を意に介さず続ける。

「もう、ホントに嫌。昔からずっとこんな感じなの。好きでもないやつから好意持たれて、丁重にお断りしてもしつこいしキリないし」

「うん」

彼女はきっとモテるだろうな。僕は雲の切れ間から見える夕陽を見ながら相槌を打つ。

「もう、ホントに無理。生理的にも。デートに行かないにしても気まずいし、行ってもきっとつまんないだろうし、キモいし。どうにかして」

「どうにかしてって言われても、条件が…」

条件が揃っていないから無理。無意識に言ってしまいそうだった。慌てて口を噤む僕に、「条件?」と尋ねる。この『チカラ』についてはあんまり他人に話したくない。現実にこんな不思議な能力があるだけで引かれるだけだし、こんな奇天烈な話を間に受けるやつなんてまずいないだろう。

「い、いや、こっちの話」

「ふうん。変なヤツ」

変な『ヤツ』ってなんだ、仮にも年上だぞ!

不安そうな態度で相談している時でも、そういう調子は崩さないのか。

「まあ、いいわ。行きたくないけど行くしかない。いつもみたいに、心底申し訳なさそうな顔作って断ればいいし」

そんな単純な作業みたいに、勇気を出して思いを伝えた人間の気持ちを無下にするのか。

モテる女子ってみんな、こんな感じなのか。

教室や本人の前では愛想よく振る舞ったり演じたりするけど、裏ではこんなにも容赦のない発言を暴発するのか。

僕は、女子という生き物がますます分からなくなってきたし、更に恐くなった。

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