【3】



お昼はカレーうどんを食べた。


カレーで制服を汚さないという難しいミッションをやり過ごし、灘流が駆けつける最悪の事態は免れた。



免れたのに…。






なんでこんなことに…。



どこで選択肢を誤ったのだろう。



ぶち当たって来た相手の足をへし折るべきだったのだろうか。


それとも三秒ルールを適用して、チョコを食べれば良かったのだろうか。



森に行くべきじゃなかった?


森でロリコン野郎を見つけなきゃ駄目だった?



歌の選曲ミス?



分からない。



考えても考えても私には分からない。





絶望に飲み込まれそうな私を見かねたかのように、去来する誰かの言葉。




そうさ今こそアドベンチャー



数ある将来の夢の中に、冒険者も選択肢に入れなさいという神の御告げかもしれない。



わかりました。



冒険者を目指します。



冒険者なんてファンタジーな生き物は、この世界に生息してませんが、なんとなく目指してみます。



目指してる風のていで、うっすら目指します。




御告げ問題はクリアされたから、最初の問題に戻ろう。



果たして私は、無事答えにたどり着けるだろうか…




ともすれば不安の波に飲み込まれそうになり、絶望に震えながら、どれ程の時を過ごしただろう。



ふと、小さな小さな光が見えた。






もしかして…





「…カレー…うどん…?」



そうだ、カレーうどんだ。


カレーうどんに違いない。


何故こんな簡単なことに気付かなかったのだろう。



全ての事柄はカレーうどんを指しているというのに。



カレーうどんさえ選択しなければ、こんな結果にならなかった。



謎は全て解けたよじっちゃん。




「カレーうどん関係ないよね。」


「三原君、私の思考の海に勝手に入ってこないでください。なんでカレーうどん関係ないって分かるの?」


「え、なんでって聞いちゃうんだ。」


「分からないことは聞くよ。」


「いやいや、分かるよね。どう考えても、この前グースカ寝てた結果の0点ですよね。何の落ち度もないのに悪者にされたカレーうどんに謝るべきだと思う。」


「三原君、確かに何の根拠もなく、カレーうどんを疑ったのは良くなかったと思う。でもね、カレーうどんだけが被害者じゃないんだよ。強いて言うなら皆被害者だよ。今回私は試験という悪しき風習が、果たして本当に必要なのか一石を投じる為、敢えて無謀な試みをしてみたわけ。与えられたことだけを、流されるようにこなすことに疑問も抱かない人々に、考えて行動することの重要性を知ってほしかった。自分で何も考えず、目の前に提示されたことをやり、誰かの敷いたレールを行けば人生は楽だと思う。けど、私達は常に考えなければいけないよ。考えることを止めたら駄目。考えて考えて、自分の最善をみつけなきゃいけない。そうして見つけた最善も、最善と呼べるものじゃないかもしれない。それでも、それはそれで良いと思う。私は抗い、もがき苦しみながら社会や大人達に挑み、私らしく生きていきたい。出来れば皆にも自分らしく生きてほしいって思う。…なんて偉そうなこと言っても結局、今回の一石はなんの爪痕も残せず終わってしまった。残せないだけなら良かったけど、私は、敗れた。完膚なきまでに。…無力な自分が悔しいよ。まあ、だからといって諦めたりはしないけどね。自分らしさを失わないために。」


「0点だったけどまた寝るし、皆も寝ればいいのにってことですねわかります。」




「…三原君。」

「何?」



私の声が、ちょっとだけ震えていたことに気付いた三原君が、真面目な顔で私を見つめる。



私は、制服で己の存在を誇示する憎き一点を指し示す。



ミッションクリアなら…ず…



灘流、ごめん…。私、汚れてしまった…



「…」

「…」



三原君は真剣な面持ちで私を見ると





「何この無駄シリアス。」



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