【2】
歩くの大好き少女の歌を歌い、純粋さをアピッたのに、茶会会場も帽子の人も発見出来ないのは何故だろう。
か弱く儚く純粋な、いたいけな乙女が森で迷ってる風なのに放っておくとは、どんな神経なんだ。
私に興味ないとか、きっとロリコンに違いない。
ロリってないヤツに出す茶はねえというスタンスだと思われる。
ロリって何歳までなの?
十歳くらい?
十歳って言い張ればいけるだろうか?よし、十歳って言い張ろう。
決意虚しくお迎えはないし、会場も見当たらない。
私の、この、生クリームがアホみたいにのったパンケーキへの溢れる思いは、一体どこへぶつければいいのか。
私は生クリームがアホみたいにのったパンケーキへの溢れる思いを歌に託した。
〈語り手〉、〈父親〉、〈息子〉、〈魔王〉の四人が登場する某有名ソングを、ちゃんと声を変え使い分け歌いきった頃
「おーい、姉ちゃーん。」
魔王が現れた
魔王が仲間になりたそうにこちらを見ている
「?…姉ちゃんサボり?」
「違うよ。狂った茶会の会場を探してた。」
「何それ怖い。」
「灘流は何してるの?」
「姉ちゃんが森に入ったのが見えたから、追いかけて来たんだよ。」
「私を口実にサボりですねわかります。」
「それは違うよ。俺には授業よりも姉ちゃんが大事なんだ。」
「姉ちゃん大好きっ子か。」
「俺が姉ちゃん大好きじゃないわけがない。もしも世界が姉ちゃんの敵になったら、世界と戦うくらい大好きだよ。」
「ごく普通の何処にでも居るありふれたか弱い乙女なので、そんな世界の命運をかけた戦いには巻き込まれないです。」
なんか微妙な顔された。
ああ、そうか。
私のことをそこまで思っててくれるなんて、ジ~ン的な対応じゃないのが不服なんだね。
空気読めなくてすみません。
「…普通ってなんだろう。」
「どうしたの?急に哲学っぽい流れに持っていこうとして。森の瘴気にやられて人生に迷ったの?」
ここは迷いの森。
迷ってもしかたない。
「違うから。俺の中の普通の定義が、ちょっと姉ちゃんと違う気がして確かめたかっただけだよ。」
「普通に対する定義は、誰でも同じなのでは。」
「あ~…うん、そうだね?…そろそろ戻らないと、昼飯食い損ねちゃうよ。結構奥まで来てるし。」
「それは大変。…なんか機嫌良い?」
「だって、学校に居るのに姉ちゃんの顔見れたし。」
昼でも薄暗い森のショボイ木漏れ日よりも、美少年の笑顔の方がキラキラしてる件。
目が、目がー。
「お昼何食べよう。」
今日はお弁当じゃないので、食堂のメニューから選ばないといけない。ーーお弁当の時でもお弁当前に食堂で食べたりもするが。
さっきまで甘いパンケーキ気分だったけど、あっという間に主食気分。
「晩御飯はなんだろう?被らないお昼にしないと。」
「いや、うちの晩御飯と学食なんて、早々被らないよ。」
「そんなの分からないよ。お昼にカレーうどん食べたら、夕食もカレーうどんでしたという悲しい結末があるかもよ。」
「カレーうどんて家で出たことあったっけ?」
「ないね。…カレーうどん食べたくなったから、カレーうどん食べよう。」
あと何食べよう?ーー今日の丼物って何種類だったかな?取り敢えず全種類食べよう。
「じゃあ俺もカレーうどんにして、『今俺は、姉ちゃんと同じカレーうどんを食べているんだ』って噛みしめながら食べるよ。」
「姉ちゃん大好きっ子か。」
「まあね。」
「…ねえ灘流。もしも、…もしも私が、カレーうどんのカレーで制服を汚してしまったとしたらどうする?」
「その時は俺を呼んで。どこに居てもすぐに駆けつけて、制服のカレーなんてなかったことにしてみせるよ。姉ちゃんの制服を汚すカレーを、俺は絶対許さない。例え他の誰かが許しても、俺は絶対カレーを許さない。」
「灘流…。」
「姉ちゃん…。」
「な~~だ~~る~~」
「姉~~ちゃ~~ん~」
スローモーションでヒシと抱き合う。
特に意味はない。
ついでに灘流の匂いを嗅ぐ。
もちろん意味はない。
育ち盛りのせいか、どんどん身長が伸びてる気がする。
「じゃあ戻ろう。」
「おう。」
繋いだ手をブンブンしながら学校までの道を歩いた。
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