【2】
さぁ、ヘタレ君、汚名返上のチャンスよ。
今度こそしっかりやって、私を楽しませてよね。
「萩原君?どうし…っん…」
よっしゃーーーッッッ
キターーーーーーッッ
萩原君の唇、頂き!
やれば出来るじゃない。これで君はヘタレ返上だよ。
うわヤバい…。キスがすごく上手。ヘタレと見せかけて、この上手さ。やっぱイケメンは違うね!
「…」
「…」
はぁ~、もっと萩原君とキスしたい。
戸惑った振りで瞳を向ける。
もっとして。もっとキスして。…キスでこれってことは、あっちの方もすごいんじゃないの~?期待しちゃうわ~。うふふ。
うっかり言いかけて慌てて口をつぐむ。
「…ごめ、ん。俺…」
恥ずかしがる感じで俯いて首を振っておく。
「…あ、…そろそろ俺、行かないと。」
「生徒会室?」
「ああ。…一緒に行く?」
「いいの?」
な~んて聞いてるけど、もう何回も生徒会室には行ってるんだよね。
「美羽は、…特別。」
とびきりの笑顔を見せれば、萩原君は眩しそうに目を細めた。
「よく来ましたね、美羽さん。」
そう言いながら、葛城君が私の頬に指を滑らせば、ムッとした顔の萩原君が視界の隅に入る。
うんうん、君の気持ちは良~く分かるわ。大好きな美羽ちゃんが他の男に触られて面白くないのよね。
葛城君に嫉妬してる顔もやっぱり美形で素敵。
「美羽、何してる。早くこっちへ来い。」
会長席に座る
「嫉妬ですか?醜いですね。美羽さんは別に、貴方のものではありませんよ。」
「はっ、良く言う。」
不機嫌な藍蒔君がツカツカとやって来て、私の手を掴めば、反対側の手を葛城君が掴んだ。
「そっくりそのまま返してやるよ。…葛城、さっさと美羽から手を離せ。」
「貴方が離せば良いでしょう。」
私をめぐる一触即発が堪らなく気持ち良い。
「二人共、落ち着いて!仲良くしなきゃ、美羽、メッてしますよ!」
気持ち頬をぷくっとさせる。
「…すみません。美羽さん。」
「悪い…。ちょっと大人気なかったわ。」
「お茶でも入れてきましょう。」
「美羽ね、甘~いココアが飲みたいな。」
「わかりました。」
藍蒔君に手を引かれ、会長席に座った彼の膝に座る。
至近距離で見る藍蒔君の美しさに、うっとり。
この美形の心だけじゃなく、身体も私のものにする日が来るかと思うと…うふふ、…顔がにやけそう。
「ひゃっ!?」
うおーっびっくりした。
唇のすぐ横に、突然キスされて変な声出た。
「もっ、もうっ!藍蒔君!」
可愛く睨めば
「ククッ。…唇にしなかったから、怒ったのか?」
からかうように言われ、藍蒔君と初めてキスした日を思い出す。
攻略マニュアルにもとずき、藍蒔君に接していたある日、イベントが発生。
食堂という人目がある場所で、藍蒔君は突然私にキスしてきた。
内心の狂喜を隠し、怒った振りでビンタしたよ。
「違います!」
「美羽は唇にしてもしなくても怒るな。」
「人目があるところで、するからでしょっ!」
「…じゃあ今度から、人目がないところでしてやる。」
耳元で甘い声があああああーッ
今すぐ私を食べて!!
はあはあはあはあ
「―――」
藍蒔君とのあれこれを、妄想してたせいで、言ってること聞き逃しちゃった。
まあ、どうせ、美羽は可愛いな、とかそんな感じのことだろうからいっか別に。
勝色の瞳が愛しそうに見つめながら、私の髪を優しく指で鋤いた。
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