お手軽異世界トリップ

カゲトモ

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 世の中に“物語”はごまんと存在する。それは小説とか漫画とか音楽とか演劇とか映像とか、いろんな形で存在している。原作が漫画で映像化している、なんてものも沢山だ。

 そのなかで俺が一番手にしている物。それは多分映画だろう。手頃な金額でどこでも見られて(一部の作品は違うけど)エンターテイメント性があって、非現実に行くことができる。

テレビの小さな画面や、映画館の巨大なスクリーン。その前に座るだけで二時間の少旅行に行けるなんてとても素敵なことじゃないだろうか。しかもその行先は自分の知らない世界なんて、それがたった一八〇〇円(レンタル旧作だったら百円もしないなんて)安すぎると思う。

そんな魅力的なものに心惹かれている俺だけれど、俺なんかよりもっとドハマりしている人はそれこそごまんといるわけで。目の前にいるミカドさんもその一人だ。

「マスター、アレもう観た?」

「新作のアレですか?」

「そうそう」

「もちろん観ましたよ、公開の週に」

 お互いの映画の好みはもう知った仲で、アレとかソレとかでどの映画かすぐ分かる。この間ミケとイツキちゃんと出会った時に視て

いたアレだ。

「さすがマスター、早いね」

「とか言って、ミカドさんこそ公開日に行ったのでは?」

 気になる映画は基本的に公開日に見るタイプの人だし。

じっと目が合うとミカドさんはニシシと笑った。

「分かった?」

「分かりますとも」

「えへへ、女性に囲まれながら公開初日の初回に行っちゃった」

 行っちゃったって言ったっていつも通りじゃないのそれ。今更驚いたりしないよ。

「でも前回のシリーズの時、男性のお客様も多かった気がしますけれど? 私が行った時もチラホラいらっしゃいましたよ」

「公開初日だからかなぁ。やっぱり女性が多くって。なんたって今話題の若手俳優さんが主演だからね」

「そうですねぇ」

 若手俳優とか人気俳優とか使うとキャスト目的なのか、ファンの方が多くて囲まれることもしばしばあったりして。もちろん原作や監督、作風とかが好きで見る人もいるだろうけど。俺はどっちかっていうと作風で選んでいることが多いかも。

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