希望の虹

プロローグ

ある時、ある所で、ある国が滅亡した。


辺りにたちこめる死臭、無数に散らばるがれき、人の声は全くない。


かつて、ここが国であったことを忘れそうになる。


ここにいるのは俺と、深手を負い、がれきによりかかりながら苦しそうに息をしている女王様だけだ。


「よく聞きなさい。」


まるでこれが最後の言葉かのように女王様が話す。


「この国にもう、人は残っていません。敵はなんとか封印しましたが、この国は滅亡したと言っていいでしょう。」


そこで女王様は一度、言葉をきる。


そして、息をととのえてから再び話しだした。


「あなたには本当に申し訳ないと思っています。共に戦ってくれたというのに、私の力が足りずに、国を守れず、あなたにも傷を負わせてしまいました。本当に申し訳ありません。」


「こんな傷、たいしたことありません! 国だってなんとか―。」


俺の言葉を遮るように、女王様は首を横に振りながら立ち上がる。


「私…私にはもう、わずかな力しか残っていません。」



女王様はもう助からない。


なんとなく察してはいたが、認めたくなかった。


だが、いくら考えても、女王様を助ける方法は思いつかなかった。


「この宝玉と、残された力を使って国を再生させます。」


そう言いながら、女王様は透明ですきとおった宝玉を出した。


「そして…それと同時に、あなたをこの宝玉に封印します。」


そう言いながら今度は、首にかけている、俺の属性『光』の金色の宝玉を首からはずして、空中に放り投げた。


それとほぼ同時に、透明な宝玉に力を込めはじめる。



ズオォォォォォ…



俺たちの周りに強い風がおこる。


「女王様! どういうことですか!? 俺を封印って!? 」俺は必死に叫んだ。


徐々に体が金色の宝玉に引き寄せられている。


「あなたに、国が再生した後、再びこの国を守ってほしいのです。再びやってくるであろう敵から、新たなパートナーと共に。」


女王様は少し寂しそうに笑いながらそう言う。


「それは構いません! でも、敵は封印したじゃないですか! それに、女王様がいなくなったら、誰が俺のパートナーになるんですか! 」


もう、今にも封印されそうなのを必死に踏ん張りながら、俺は叫ぶ。


「敵は必ず復活します。その時、きっと、あなたの力が必要になるでしょう。そして、あなたが再び目を覚ます時、あなたの前にパートナーは現れます。その方はきっと、国にとっても、あなたにとっても救世主となるでしょう。」


そう言い終えて女王様は俺の方を見て微笑んだ。


その瞬間、体を引き寄せる力を強くなり、俺は封印された。


「玉の中では傷も癒せます。この国を…頼みましたよ…。」そう言い終えると女王の体は光り、弾けて消えた。








再生した国では、再生した人々が、普通の日常をおくっていた―。


[つづく]

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