僕の憧れはいつの日か消えた

おーがみ

第1話 エピローグ

とある夫婦に2人の双子が生まれた。

兄は大輝、弟は翔と名付けられ2人はすくすくと育った。

二卵性双生児ということもあり、見た目も似ているところが多く、違いは涙ボクロがあるか無いかということくらい。

翔は兄の真似を良くする子で、兄が始めた習い事も自然に好きになった。

2人は良きライバルでお互いの長所や短所を理解し合うとてもいい関係・・・のはずだった。


異変が起きたのは小学5年生の夏。

いつものように2人で習い事の自主練をしていると急に兄弟で力量差が開いてきた。

今までは競り合いの勝負だったのに今では、兄の大輝より弟の翔の方が何をやっても自分の上を行くようになったのだ。

両親もこの状況を芳しく思っていないみたいで、大輝のやる気を削がないように翔に手を抜くように言い始めた。

でも、それには納得出来なかった。


「手を抜いたら大輝は嫌だと思うから、僕は本気でやるよ」


僕は大輝ならすぐに追いついてまたあの勝負が出来ると思っていた。

しかし、そんな日は二度と来ることはなかった。

いつも通り自主練をしてる時だった。

今日はバスケをやることになり1on1で勝負することになった。

ルールは簡単。

先に5本シュートを決めた方の勝ち。

ボールをカットしたり、シュートを外したら攻守交替で、逆にシュートを決めればもう1度攻める。

準備が出来たら始めるかとお互い気合いを入れる。バスケをやるのは久しぶりで試合は接戦になると思われたが、あっさり終わった。


5-0 で翔の勝ち。


「クソっ! どうして俺とお前はこんなに出来が違うんだよ!! いつ差が開いた!? もういいこんなの...」

「大輝...? おい、どうしたんだよ!」


大輝は踵を返して家に帰っていった。

それからの大輝はいつもと違った。

家に帰っても、僕とあまり話さなくなった。

あれから兄はいつもの自主練場に一度もきていない。

僕が兄の気持ちを理解出来なかったのが原因だろう。

またいつか自主練をしにくると思いながら練習しているがもう限界だ。こんなのはつまらない。

僕は最初から兄のかっこいい姿をみてそれを真似したかっただけなのだ。

兄が習い事をやりたがらない原因が僕なら、僕はもうやらない。

傷つける人がいるならやらない方がマシだ。

僕はそう胸に刻み込んだのだ。


僕は兄にもう一度やる気を出して欲しかった。だから僕は毎日もう一度勝負しようとお願いして、お願いした。もう一度やれば、やる気になってくれると思ったから。

そうすると兄は条件を付けてきた。


「いいぜ。その代わり、お前は××××××」


兄の申し出は都合がよかった。

ルール確認をしてすぐ勝負を始めた。


試合は接戦ながら兄の勝利となった。


「よっしゃぁぁああ!! やっと勝てた、ざまぁみやがれぇ!!」

「兄さん、おめでとう」


僕は兄の勝利を喜んだ。

その日を境に、他の習い事も兄が勝つようになった。

兄は前よりもやる気に満ち溢れていた。

これでまた兄は習い事ができる、よかった。


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