幕間 彼こそは人の王

竜に祝福された国があった。

その国の王は、代々竜と契りを交わし、竜の加護を受けていた。


勇敢な王がいた。

彼こそは人の王。

竜の加護を受けずとも、戦で敗れることはなく、無敗の王は人々に軍神と崇められた。

だが、この国は竜の国。

竜を従えなければ王の器は示されない。

王は竜に認められることが、どうしてもできなかった。


大臣達は王に進言した。

神竜の巫女のちからを借りよ、と。

大臣達の言葉に従い巫女の元を訪れた王は、その美しい巫女に恋をした。

巫女は王を拒絶した。

王は幾度となく巫女の元を訪れた。


「どうすれば我のものになるか」


王は巫女に問うた。

巫女は答えた。


「わたしは竜の巫女。竜の神の元を離れるわけにはまいりません」


王は言った。


「ならば、我が其方をその呪縛から解放しよう」


そうして、王は竜と対峙した。


彼こそは人の王。

無敗の軍神。

王はその左眼と引き換えに、竜の神を滅ぼした。


竜の加護など要らぬ。

王は巫女を妻に娶り、巫女は王子を産み落とした。


だが、物語はそれで終わらない。

竜は不死身である。

人の王に魂を奪われたその竜は、荒ぶる竜の神となり、やがて王に牙を剥く。


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